いまや大人気のスペース系軽自動車。後だしジャンケンのホンダが選んだ道は、小学生以上のこどもを持つ家族にやさしい、というポジションである。
ゆえに設計された後部座席は足元が広くて大人がゆったり座れるうえに、ワンタッチで前に倒せばフラットな荷物スペースが広がり雨の日に自転車をささっと積み込むことができる。運転席のシートも立派で、背もたれが大きく包み込むように仕立てられ、運転中も快適なのである。
しかし。だから敢えて言おう。これって小学生以前のこどもがいる家族には向かないと。広すぎるのだ。後部座席の空間が。そして立派すぎるのである、運転席の椅子が。
ちびちびキッズのいる家庭では、後ろの席にチャイルドシートをつけて座らせる。そんなとき運転席にいるママは、ときどき振り返ってこどもの世話をしたいのである。ところがN BOXときたら、後部座席が広すぎて運転席から手を伸ばしても届かないのだ。タチの悪いことに、自転車を積むための床フラット化を優先して後部座席はスライドしないから対応のしようもない。さらに、運転席の背もたれが立派すぎて、運転席と助手席のあいだから手を伸ばそうにも、背もたれが邪魔していかんともしがたいのである。
なんだこれ~? 使えないじゃん。いや、ちびちびキッズのいない私が文句を言える立場でないのはわかっているが、そういうお子さんのいるご家族が購入後に「あれ?」とならないよう、ここは書いておかねばなるまい。長所と短所は背反する。クルマの購入を検討するときは、自分の使い方を考えてという基本を改めて考えさせられたクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。