コンセプトを取るのか、クルマとしての完成度を取るのかで、個々の選考委員の評価が分かれた今年のCOTY。最後までどのクルマを選ぶべきか悩んだが、今後の日本の自動車史に大きな意味を与える一台として、私は日産『リーフ』に10点を投じることに決めた。
リーフはスタートスイッチをONにした途端に軽やかな起動音とともに目覚め、静寂に包まれた優しい走行感覚とともに走ることができるクルマだ。航続可能距離はカタログ値で200km(JC08モード)と短めだったり、充電インフラが整いにくい場所があったりして、既存のエンジン車と同じ感覚で使うためには、まだ課題が多い。
しかし、電気自動車を既存のクルマと同じ軸で比べる必要があるのだろうか? クルマを使う側が環境負荷の少ない電気自動車のメリットを理解し、電気自動車の特性を生かした使い方をしていけば、これもクルマの個性として受け容れることはできると思う。
また、リーフは自社のカーナビゲーションシステムを用いて、充電スポットやエコ情報などを合わせて展開しているが、航続距離に制約がある電気自動車と上手に向き合うための情報の提供方法にアップデートを重ねている。電気自動車普及に向けた臨機応変な対応力も評価したい。
藤島知子|モータージャーナリスト
幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年からワンメイクレースに挑戦。市販車からフォーミュラカーに至るまで、ジャンルを問わず、さまざまなレースに参加している。2007年にはマツダロードスターレースで女性初のクラス優勝を獲得した経験をもつ。現在はクルマの楽しさを多くの人に伝えようと、自動車専門誌、一般誌、TV、WEB媒体を通じて活動中。走り好きの目線と女性の目線の両方向から、カーライフ全般をサポートしている。COTYの選考基準は、クルマと共に過ごす日常において、気持ちを豊かにしてくれるクルマかどうかに焦点を当てる。