【池原照雄の単眼複眼】生産挽回は「下期の下期」に仕切り直し

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押し流された「下期挽回」シナリオ

自動車メーカー各社の2012年3月期通期業績見通しは、第2四半期決算発表時に上方修正されると見られていたが、大半が据え置かれるなど不透明な展開となった。原因は言うまでもなく、タイの大洪水であり、東日本大震災で逸失した生産の「下期挽回」というシナリオを押し流した。

だが、14日からは日産自動車や三菱自動車工業などのタイ工場では生産が再開された。タイ以外の工場にも影響は波及しているだけに、この間の減産は痛いが、12月からは再びグローバルでの挽回が始まる。

株式公開している自動車10社の上期(第2四半期累計)連結決算は、トヨタ自動車とマツダが営業赤字となった。大震災の影響に加え、最高値水準が続く円高や原材料費の上昇が各社の収益を圧迫した。

もっとも、マツダを除く9社は想定していた上期の営業利益水準を上回った。秋口には、大震災による部品や資材調達の問題が解消、各社は当初の想定よりも早く「かつてない増産体制」(日本自動車工業会の志賀俊之会長)に入ることができたからだ。

◆通期業績上方修正は3社のみに

トヨタの上期営業赤字は326億円だったが、超円高にも拘わらず8月時点の予想からは赤字幅を74億円圧縮している。だが、大震災からの生産復旧で上方修正が相次ぐと見られていた業界レベルでの通期業績予想は厳しいものとなった。

今回、通期の営業利益を上方修正したのは、日産自動車、ダイハツ工業、いすゞ自動車の3社にとどまった。日産といすゞは、大震災からの生産回復が早かったのに加え、海外各地で販売好調が続いている。また、ダイハツは新型軽自動車『ミライース』の受注が計画を上回るなどで好転した。

他社は、大半が予想を据え置いたものの、洪水の影響によってトヨタとホンダは、通期見通しを「未定」とした。両社は前期決算発表時も、今通期予想を見送っており、1年のうちに2度も業績見通しが立てられないという異例の事態となっている。

ホンダは、タイの4輪車工場が水没するという最悪の被害を受けている。水没を免れた2輪車工場は14日から一部操業を復活したものの、4輪工場は下期の稼働が危ぶまれる状況にある。

◆ホンダの4輪を除き生産再開へ

タイは日本車が95%水準のシェアを確保しており、10年の現地生産実績は160万台と、設備能力も東南アジアでは最大だ。部品産業の集積度は高く、世界への供給拠点ともなっている。

このため、タイ製部品の生産停止はアジア周辺国だけでなく日本や北米などの日本車生産にも影響を与えた。トヨタは、稼働率の引き下げなどによる生産調整がタイ以外の9か国の工場に及んだ。

しかし、タイでは再開のめどが立たないホンダの4輪以外の現地工場は14日から順次、生産が再開できる状況になった。メーカーによって差は出るものの、12月以降は、タイ以外の工場への部品供給も正常化に向かう。

自動車各社の下期挽回シナリオは崩れたものの、12月から仕切り直しとなり、いわば「下期の下期」に挽回をかけることになる。依然として円高が立ちふさがっているものの、間もなく新たな業績立て直しのシナリオが見えてくる。

《池原照雄》

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