日本ではフォルクスワーゲンの旗艦車種となるのがSUVの『トゥアレグ』だ。2011年1月に発売された2代目モデルでは、ハイブリッド車を設定して大幅に燃費を向上させるなど、さまざまな改良を加えてきた。
外観デザインはフロントが最近のフォルクスワーゲン顔になった。トゥアレグはボディも大きいので必ずしも『ポロ』や『ゴルフ』と同じではないのだが、ぱっと見てフォルクスワーゲンと分かる顔だ。大型のSUVというと、偉そうな顔をしているクルマが多いが、それとは明確に異なるデザインである。まあ、良いような悪いようなといった感じである。
インテリアはフォルクスワーゲンらしい機能性が基本ながら、自然素材の採用などで上級SUVらしい質感が表現されている。ここでもプレミアムブランドの豪華さとは異なる独特の質感が表現されている。パネル合わせ目などの作り込みは高いレベルにある。
ボディは全体にやや大型化されたが、V型6気筒エンジン搭載車同士で比較すると車両重量はむしろ軽くなっている。3.6リットルエンジンの動力性能は従来と変わらない数値だが、燃費は実に38%もの向上を見ている。ハイブリッド車は従来のV型8気筒エンジンの搭載車に比べると倍以上の燃費となった。
動力性能は従来と変わらないといっても206kWものパワーを発生するので、2tを超える重さのあるトゥアレグのボディに対しても決して負けていない。アクセルレスポンスはあまり敏感なものではないが、重厚感のある落ち着いた走りが味わえる。
8速ATと組み合わされたり、スタート&ストップ機構(アイドリングストップ機構)を備えたことなどが燃費向上に貢献している。8速ATの変速フィールはスムーズそのものだし、アイドリングストップ機構も良くエンジンが停止した。
ハイブリッドはスーパーチャージャー仕様の3.0リットルエンジンに電気モーターを組み合わせたもの。EV走行も可能なシステムだ。車両重量はV6に比べて150kgも重くなるが、燃費は13.6km/リットルと格段に良くなる。この重さでこの燃費は相当に良い数値である。
ハイブリッドのさまざまな走行モードの切り換えは、いずれもとても滑らかで、トヨタのハイブリッド車に乗っているような雰囲気になる。
アクティブクルーズコントロールを始め、アラウンドビューカメラに至るまで、さまざまな先進安全技術が盛り込まれたのも旗艦車種らしいところ。HDDナビゲーションなど快適装備も充実している。
価格はV6ブルーモーションが623万円で、ハイブリッドが898万円。これだけ大きな価格差があると、売れ行きがV6が中心になるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。