【池原照雄の単眼複眼】「西軽高・東登低」で進む生産復興

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マツダの稼働率は7~8割レベルに復帰

東日本大震災で被災した自動車メーカーや部品メーカーの事業所では大型連休返上の復興作業が続けられた。それでも自動車各社は「需要があるのに作れない」(三菱自動車工業の益子修社長)という忍の時が続く。

ただ、生産回復への道のりは、工場の立地場所や生産車種などによって大きく異なることも次第に明らかになってきた。西日本での立地を主体とするメーカー、さらに生産モデルでは登録車よりも軽自動車の方が回復が早まる見通しだ。いわば「西軽高・東登低」という状況となっている。

「国内工場の稼働率は5~6月に7~8割程度に戻り、下期(10月)から本格操業を目指す。海外は直ちに操業停止する状況にはない」。マツダの山内孝社長は連休前の決算発表会見で、「まだ不透明な点はある」としたものの、今後の生産復興へのアウトラインを示した。

同社の組立工場は広島県の本社工場および山口県の防府工場の2拠点。大震災後から3週間余りが経過した4月4日には在庫部品による生産を再開し、13日からは操業率が5割程度であったものの、いち早く2直操業に復帰させている。

◆ダイハツは軽工場が2直体制に

電子部品などで供給がひっ迫しているのは、マツダも他社と同じだが、基本的にサプライヤーは広島県を中心とする西日本地域の立地が多く、部品調達のダメージは相対的に軽微だった。

愛知、岐阜の中部圏と岡山県に組立工場が立地する三菱自動車も似たような調達構造にある。三菱は、計画比で上期は8割程度の生産を確保し、「10月からは正常な生産レベルに復帰させたい」(益子社長)という。

両社の工場は夏場のピーク電力を抑制しなければならない関東・東北エリアからも外れている。中部電力・浜岡原発停止による影響の懸念はあるものの、仮に生産回復ペースが想定より上がった場合の操業の自由度は比較的高い。

一方、車種による明暗もある。軽自動車トップのダイハツ工業は大阪府池田市の本社工場と京都工場を除く滋賀県の竜王、大分県の中津第1・第2工場で今月6日から2直操業に復帰した。いずれも軽自動車の工場だ。まだ残業のない定時操業だが、稼働率は9割程度に戻った。

◆「世界的に旺盛な需要」に応えるため…

同社も生産拠点が西日本に集中しているほか、「軽自動車の部品メーカーさんは被災したところが比較的少なかった」(三井正則副社長)ことが、早期の稼働率回復につながっている。

車種という点では2輪車も海外工場では部品調達がほぼ現地で完結するので、回復が順調だ。ホンダは今年度、海外を中心にフル生産して昨年度より「1割程度の生産増を目指す」(池史彦専務)という。

しかし、ホンダは4輪車の正常生産への復帰は今のところ「年内」との見通ししか出せないでいる。トヨタ自動車も「おおむね11月から12月」との見込みだ。生産拠点が東西地域にまたがり、さらにトヨタのように生産車種が多いメーカーは苦闘が続く。

ただしトヨタの場合、11~12月という正常化のめどは「全車種、全生産ラインの復帰」(豊田章男社長)を前提にしたものであり、下期入りするころの操業度は相当高まる可能性もある。「世界的に旺盛な需要」(ホンダの池専務)に応えるため、各社の生産復興がわずかでも前倒しされるよう期待したい。

《池原照雄》

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