わが母校でもある早稲田大学の大隈講堂で開催された今回のCOTY選考会は、午前中に早大主催のシンポジウムが組まれていた。その中で出た「趣味と実用のクルマを分けて考えるべき」というメッセージ、まったく同感だ。
実用車は安くて使いやすくて燃費がよく、趣味車はカッコよくて走りが気持ちいい。そういうメリハリの効いたクルマづくりが今後の社会では求められていくのではないかと考えている。
ただし前者は今後、カーシェアリングや公共交通機関で代用されることが多くなるかもしれない。つまりメーカーが売って僕たちが買うクルマは、電車やバスやシェアリングで置き換えできない魅力を持つことが重要になる。
この業界ではスポーツカー嫌いに見られることも多い人間が、『CR-Z』に満点、『RCZ』に高得点を投じた理由は、ここにある。
駆け抜ける姿を目で追いたくなるデザインと、速くはないけど低さや軽さが手に取るようにわかる走り。エコもしっかり押さえつつ、価格は手の届くレベルにある。今後の市販車に求められるファクターを、現時点でうまくバランスさせたのが、この2台ではないかと思っている。
森口将之|モータージャーナリスト
試乗会以外でヨーロッパに足を運ぶことも多く、自動車以外を含めた欧州の交通事情にも精通している。雑誌、インターネット、ラジオなどさまざまなメディアで活動中。著書に『クルマ社会のリ・デザイン』(共著)、『パリ流 環境社会への挑戦』など。