新型『マーチ』がタイ生産になったことは、買う人が気にするかどうかの問題でしかないと思うし、欲しいという人を止めはしない。
ただ、やれボンネットとフェンダーの隙間がどうとか、インパネのチリ合ってないとか、そういったことが気になる人はやめたほうがいい。実車の仕上がりがどうかという以前に、いずれにしても「気になる」という時点で選択肢からはずしたほうが無難だろう。
もしも国内生産だったら、そのあたりの事情も多少は違ったのかもしれないが、「タイ生産車」という現実がある以上、ずっとそれが気になってしまうはずだからだ。
もっとも、このクルマで惜しいのは先代~先々代よりも見た目が没個性的になったことだ。
これまでのマーチは、あのデザインが欲しいという明快な理由で買えるクルマだったし、クルマの出来が少々いたらなくても許せた。
しかし現行マーチは、これまでのように女性主体のクルマではなく、グローバルカーとして幅広い層を相手にするのだから、置かれた立場からするとこうせざるをえなかったのだろうが、国内の消費者にとって積極的に選ぶ理由が薄らいだのは否めないように思う。
とはいえ、走りは安っぽいながらも概ねよくまとまっているし、3気筒エンジンのフィーリングさえ許せれば、低燃費もありがたい。
よく見ると、先代~先々代に比べると薄味でも、今の同価格帯のライバルと比べると、なかなか面白いカタチに見えてくるわけで……
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジンの編集部員、自動車専門誌の記者を経てフリーランスとして独立。ユーザー目線に立った視点と、幅広い守備範囲を自負し、「クルマ好きのプロ」として、近年は WEB媒体を中心に活動中。レスポンスの試乗コメントでは、他媒体では諸事情で書きにくい「本音」も吐露!?