雷雨の予報が嘘の様に晴れ上がった5月30日の戦没者記念日、第94回インディ500の決勝レースが開催された。
朝からぐんぐん気温は上昇、推定40万人のレースファンの熱気も最高潮に達した米東部時刻13時00分、500マイル・200周のロングディスタンスレースのグリーンフラッグが振り降ろされた。
スタート直後のポジション争いに競り勝ったのは2007年ウィナーのダリオ・フランケッティ。フランケッティは初周でポールポジション・スタートのエリオ・カストロネベスからリードラップを奪うと、その後も後続を寄せ付けない別次元の速さで200周中155周をトップで快走。自身2度目となるインディ500覇者の栄誉を手中に収めた。
2週間に渡った練習走行とはうって変わった蒸し暑い気候条件下、セッティングに苦しむマシンも多く、アクシデントも続発。レースは度々イエローフラッグで中断される荒れ模様の展開となった。最後の勝負を分けたのも終盤161周に発生したセバスチャン・サベードラのクラッシュによるフルコースコーションだ。ここでフルに燃料補給すれば残る周回はギリギリ走行可能とあって、マイク・コンウェイ、ジャスティン・ウィルソン、グラハム・レイホール、そして直前のピットで大きく順位を落としていたカストロネベスの4台を除く全車が一斉に最後のピットイン。中位を走る4台は、残り燃料が尽きる前のイエローコーションに賭ける作戦に出た。
ステイアウトを選んだコンウェイがトップでレースは再開されたが、その後イエローが出ることはなく4台は次々に燃料補給の為グリーンフラッグ下でピットイン。トニー・カナーンも最後尾スタートから怒濤の追い上げで一時は2位まで浮上し、終盤もフルリッチで果敢に攻めこんだがピットインを余儀なくされ、順位を落とした。
大詰めにきて再びトップを奪還し燃費走行に徹するフランケッティをダン・ウェルドンが追撃する格好で迎えたファイナルラップ。ここに最後の大波乱が待っていた。ライアン・ハンターレイとコンウェイが接触し、コンウェイはマシンを大破。レースはフルコーション下でチェッカードとなる異例の幕切れとなり、フランケッティが自身2度目となるインディ500勝者の栄誉に輝いた。
2位はウェルドンで確定したが、最後のイエローコーション発生時の順位確認によりゴール時の順位も変更。マルコ・アンドレッティが3位となり、マリオ・ロマンシーニが2010年インディ500のルーキーオブザイヤーを獲得した。予選時のアクシデントに祟られ最後列31番グリッドからスタートし、途中11位までポジションをあげていた佐藤琢磨だが、ピット作業時にタイヤ接触があったとしてレース再開後のグリーンフラッグ下で15秒のピットストップペナルティ。周回遅れとなり、20位でレースを終えることとなった。不安定なハンドリングに苦しんだ武藤英紀は76周で無念のリタイアとなっている。