【ニューヨークモーターショー10】アメリカEV市場、課題は消費者の理解…BMW米EV事業部門スタインバーグ氏

エコカー EV
北米BMW社におけるEV事業部門のマネージャー、リチャード・スタインバーグ氏
  • 北米BMW社におけるEV事業部門のマネージャー、リチャード・スタインバーグ氏
  • 北米BMW社におけるEV事業部門のマネージャー、リチャード・スタインバーグ氏
  •  EVパビリオン
  • EVパビリオンに展示された MINI E
  • EVパビリオンに展示された MINI E
  • EVパビリオンに展示された MINI E
  • EVパビリオンに展示された MINI E
  • ニューヨークモーターショーに出展されなかったテスラのモデルS

各社ブースでは市販モデルのハイブリッド車が注目されたニューヨークショーだが、テスラ、フィスカーなど米系EVメーカーやBYDなど中国系が出展を見送ったことによりEVの量産モデルを披露するのは日系ブランドに限られた。

そのような中、この分野の専門誌、グリーンカー・ジャーナルが主催する「EVパビリオン」というシンポジウム、そして試乗コーナーがニューヨークモーターショー内で開催された。

以下はシンポジウム後の単独インタビューである。メーカー(BMW)とジャーナリスト(グリーンカー・ジャーナル誌編集長)の視点からアメリカにおけるEVの普及についてコメントを得た。

BMWは北米で450台の『MINI E』を月額850ドルで一般リースするなど、普及に力を入れるメーカーの一つ。北米BMW社におけるEV事業部門のマネージャー、リチャード・スタインバーグ氏に話を聞いた。

「まず2015年までに開発を継続しながら量産型の準備を進める予定です。ドイツ、フランスその他の欧州で、1000 - 15000台規模のテストを開始します」

氏は続けて、

「その過程で重要となるバッテリーの開発に関して、BMWでは社内での開発と共に、外部企業からの協力によるものも模索しています。BMWは自動車メーカーですので、車体の開発には問題はありませんが、バッテリーに関してはその分野の最先端技術を持つ企業との提携は重要となるでしょう。」

と、鍵を握るのは最先端のバッテリー技術だと指摘。その上で米国市場でEVの普及分野に関しては以下のように語った。

「やはり、都市部で使用される小型車がまず最初のきっかけとなるでしょう。現在のEVでは一度の充電での走行距離が100マイル(おおよそ160km)というのが一つの壁となっています。現状ではEVという選択は非常に特殊なものであり、一般の家庭で実用に耐えられる水準にはありません。充電環境の整備も含め、当分は都市部での限定的な使用か、(警察などの)官公庁での導入が現実的です。」

と分析した。アメリカ市場でEVが10%の販売シェアを得る時期については明言を避けた。

「先に挙げたような理由で、一般への普及にはまだ障害も多く、我々が『ピュア・バッテリー・ビークル』と呼ぶ純粋なEVだけでシェアが10%に達することは当分ないでしょう」

「しかしEVにハイブリッド、ディーゼルやそれとのハイブリッド、更には水素エンジンなど、次世代へのアプローチは一つではありません。地域や使用環境においてより適した方式があるはずであり、そうなったときにはEVもそれ以外の新エネルギーを使用する車もしっかりとしたシェアを得られることになると思います。」

4月から三菱『i-MiEV』の一般販売がはじまり、年内に日産が『リーフ』を販売開始する日本の現状を指摘すると

「日本ではハイブリッド車が一番売れて、更にEVがすでに市販されている。これは『教育』によるもの。これに尽きます。日本は特にこの分野への理解が高い国です。日本やドイツ、スイスなどの消費者はこの分野の技術や状況に非常に深い理解を示しています。これは社会的に環境に対する考えや、ガソリンを無駄遣いすることへの嫌悪感などがしっかり根付いているからでしょう。欧州の一部では日本同様に道は狭く、都市部での渋滞も激しい。しかし日本ほどエコロジーに高い関心を持っている国は稀と言えます」

「ですから、世界でEVが普及するためには、市場や消費者がこの種の製品全般に対しての違和感がなくなったときからになるでしょう。今までも我々は各地域に適した仕様の製品を提供してきましたが、この手法はEVにおいても同様となるでしょう」と、市場と消費者の熟成度をも重要と指摘した。

量産EVのライバルとしての日本車についてはライバルとしてだけではなく、市場を形成する有力なパートナーとしても期待しているようだ。

「競争相手が多いことは市場を活性化させるので、この点は非常によいことだと考えています。何より新しい市場なのですから、最初につまずくわけには行かない。日本製のEV/ハイブリッド車はとても高品質であり、細かな点まで非常に配慮が行き届いている点は本当に素晴らしいものです。EV市場はまだ小さいので、日本車のような高品質なものがきっかけになれば、市場は健全に成長していくことでしょう」

「大きな米系メーカーはすぐに強敵になっていくでしょう。何より米国の市場なのですから、米国車には頑張ってもらわねばなりません」

と、フォードやGMのEVへの取り組みにエールを送った。プレミアムブランドらしく、市場形成あってこそのBMW/MINIであるというスタンスである。

田中秀憲
NYCOARA,Inc.代表。
ニューヨーク在住。
日本国内で広告代理店に勤務の後1999年渡米、独立。
リサーチ/マーケティング専門会社NYCOARA,Inc.を設立。
官公庁、民間企業、調査機関などからの依頼で多様な分野の調 査/分析を行っている。
内閣の白書の原案作成や行政機関の資料作成のサポートなどの他、大学での講演、TV/ラジオへの出演や一般のビジネス誌などへの寄稿も多い。

《NYCOARA, Inc. 田中秀憲》

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