日本自動車工業会(会長=青木哲本田技研工業会長)の「二輪車特別委員会」委員長と副委員長が、4半期にわたって実質不在のままだ。
同委員会は二輪車メーカーで構成される。2007年5月からの戸上常司氏(ヤマハ発動機会長・当時)が委員長を務めていた。しかし、昨年10月に会長から社長に復帰した戸上氏は、同12月から病気療養に専念。一線から身を引き、今年3月25日付けで社長を退任し顧問となった。しかし、同委員会は12月にヤマハの人事方針が公表されても後任の選出に動かなかった。
二輪車特別委員会の事務局である交通統括部は広報担当を通じて「委員長が不在のときは副委員長が代行すると定款にある」とし、5月の総会まで委員長を不在とする方針だ。すでに副委員長の1人である大山龍寛本田技研工業常務が代行中だ。
ところが、委員長を代行する副委員長人事でも問題がある。二輪車特別委員会は4人の副委員長が就任し、4つの部会がある。ヤマハの綿引亮常務執行役員も08年3月から副委員長に就任した1人だが、同社では綿引氏も戸上氏と同日に顧問に退いた。つまり、二輪車特別委員会では委員長も副委員長も、実質不在の状態にあるということだ。
二輪車国内市場の落ち込みは、四輪車どころではない惨状だ。新車需要は80年代のピークの6分の1以下。今年は年間40万台に踏みとどまれるかどうかというほど深刻だ。
二輪車特別委員会は、こうした二輪車市場の混迷を打開するために、駐車場不足や行きすぎた取締り、原付バイクの排気量規制緩和など取り組まなければならない。二輪車特有の課題が山積している中で、5か月以上もピンチヒッターで運営を続けることになる。ただでさえ後手に回っている対策が、ますます遅れるという指摘がある。
二輪車業界の関係者からはこんな不満が出ている。「役員を紹介する自工会のホームページでは、戸上氏の肩書きは社長に復帰しても、社長を辞めても、取締役会長のまま。ここからしても自工会事務局は二輪車に対する熱心さが欠けている」。
世界の冠たる二輪車生産国の国内販売不振の原因が、こんなところでも透けて見える。