ウインドスクリーンがセンターピラーまで伸びている! 数を売らなきゃいけないBセグメントのハッチバックに、よくぞこんな大胆な設計を採用したものだ。さすがシトロエンである。
しかも旧型に似たラウンドシェイプのボディは、彫刻的なプレスラインや効果的なクロームモールで、かつてのフレンチコンパクトにはありえないクオリティ感を獲得している。コストダウンに走る国産コンパクトカーとは対照的な進化だ。
そのぶんインテリアはフツーっぽいデザインになったが、ふっかりやさしいシートはシトロエンならでは。そして新型は乗り心地もまろやかになった。
思えば新世代プラットフォームを初採用した旧型は乗り心地がけっこう硬めだったけれど、新型は誰が乗ってもシトロエンらしいと思うだろう。エンジンがBMWと共同開発した新世代にスイッチして、静かでスムーズな加速が味わえるのもいい。
でもキモはやっぱり、頭上まで伸びるウインドーがもたらす明るさだ。小さなクルマだからこそ、この開放感はうれしい。サイズアップを最小限にとどめる代わり、大きな窓で心理的な広さを演出した。フランス産ならではのセンスが光るコンパクトカーだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
森口将之|モータージャーナリスト
試乗会以外でヨーロッパに足を運ぶことも多く、自動車以外を含めた欧州の交通事情にも精通している。雑誌、インターネット、ラジオなどさまざまなメディアで活動中。著書に『クルマ社会のリ・デザイン』(共著)、『パリ流 環境社会への挑戦』など。