【D視点】原点、宿命、地産地消…シボレー カマロ新型

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癒しのアイテム

4シーター・アメリカンスポーツクーペの象徴、シボレー『カマロ』が7年振りに復活、5代目として登場した。21世紀のスポーツクーペの新たな定義を謳う新型は、米国EPA燃費公表値による市街地走行で約7.7km/リットルを実現しており、燃費の悪いアメリカ車のイメージを払拭している。

ボディサイズも、全長4840mm×全幅1915mm×全高1380mmと、先代より全長を75mm短縮している。308馬力3.6リットルV6エンジンの「LT RS」と、405馬力6.2リットルV8エンジンの「SS RS」の2モデルとが用意され、価額はそれぞれ430万円と535万円となっている。

ヘッドランプとグリルを一体化したフロントマスクや、リアホイールを強調したスタイルは、初代のデザインテーマを復活させたようだ。40年の歳月により、スリークだったボディも筋肉隆々にはなっているが、大味なデザインディテールは相変わらずなので、良き時代のアメリカを感じさせる。

新型カマロは好評で、日本における2009年の計画販売台数を当初計画より増やしたにもかかわらず、既に完売しているそうだ。最近、ハーレーダビットソン社製の大型バイクが、熟年層を熱くしている。アメリカのおおらかさが共通の特徴であり、癒しのアイテムとして、人々のハートを捕らえ始めているようだ。

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アメリカンドリームに隠された因縁

60年代は、アメリカンドリームに燃えたアメリカがクルマのデザインで世界をリードしていた。また、若者のシンボル的クルマ、フォード『マスタング』が生まれた時代でもある。そして好調なマスタングに対抗するようにカマロも生まれた。

しかしマスタングのデザインに似た初代カマロは、3年という短命であった。成功作ではなかった初代のデザインアイテムを新型で敢えて復活させたのは、アメリカンドリームに拘っただけではなく、マスタングに対してのリベンジをも感じさせる。

日本でカマロは2代目から正規輸入されたので、シボレー・カマロと言えば2代目のイメージが強い。もっとも、これは団塊の世代にとってであり、今の若者には3 - 4代目のイメージが強いようだ。このように初代カマロは日本で馴染みがないので、5代目シボレー・カマロを見ても、フォード・マスタングのように見えてしまうところがある。

その意味で対岸の火のようなところもあるが、5代目カマロと6代目マスタングとの怨念の戦いは、アメリカ自動車業界の消長を占うものなので目が離せない。新型カマロのデザインが『ポピュラー・メカニック』誌主催「オートモーティブ・エクセレンス・アワード」を獲得するなど、白熱の戦いは始まっている。

3
地元向けだから舶来がありがたい

多くの工業製品は、米ソの冷戦終結後にアメリカの市場原理主義が世界に導入されたことにより、グローバル視点で開発されるようになった。クルマについても、国内販売より輸出の割合が高くなるにつれて、グローバルスタンダードが常識となっている。

一方、農産物についは、飢饉や食の安全の観点から輸出入自由化は十分に進んでいない。さらに日本では四半世紀前から「地産地消」の活動を進めている。消費地の近くの生産者から農産物を購入することにより、新鮮な品物を入手でき、流通エネルギーを削減できる。加えて地域経済の活性化、地域の伝統的食文化の維持と継承も期待される。

工業製品についても、地域の活性化や、文化的価値を考えた場合、農産物と同じように、地域生産地域消費について考える時期に来ている。

クルマのテクノロジーの部分では、グローバルスタンダードの効果を評価出来るが、使い方やデザインに関しては、自国の文化を反映したクルマをユーザーに提供して、文化向上に貢献することを勧めたい。舶来品であるシボレー・カマロについても、エキゾチックな文化として楽しむことにより、舶来品本来の価値も享受出来ると言うものだ。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。
《松井孝晏》

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