【井元康一郎のビフォーアフター】2013年、出るかマツダハイブリッド

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マツダがトヨタHVシステムの供給を受けると報道された。自動車再編の本格化に向けた一歩となるか。
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  • プリウス
  • プリウスに搭載されるハイブリッドシステム
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相次ぐ自動車業界の合従連衡

三菱自動車のプジョーへの出資打診に続き、スズキとフォルクスワーゲン(VW)の電撃的な資本提携と、自動車業界ではこのところ、中位以下のメーカーがメジャーメーカーと手を組む合従連衡の話題が続いている。そこに新たに飛び出してきたのが、トヨタとマツダがハイブリッドシステムの供給を受けることで大筋合意したというニュースだ。

この報道についてはトヨタ、マツダ両社とも、現時点で決まった事は何もないというコメントを発表している。実際、今日においてはトヨタおよびグループ会社は自社モデル向けのハイブリッド車用部品の生産で手一杯という状況。他メーカーにもハイブリッドシステムを供給するというビジネスプランはかなり前から持っており、一部では実績もあるが、供給先を拡大するのはかなり先になりそうだ。

◆初めてではない、トヨタ×マツダの噂

一方のマツダも、機会あるごとにハイブリッド技術について多くの記者からたずねられていたが、「ハイブリッドシステムの開発は独自でやっている」(開発担当専務執行役員の金井誠太氏)と主張してきていた。

が、トヨタがマツダのハイブリッドシステムを供給という噂が出たのは、今回が初めてではなく、今年だけで2度目。また、それ以前からマツダはトヨタに接近していた形跡がある。ある自動車業界関係者は、「07年にサブプライムローン問題の影響でフォードの資金繰りが悪化し、マツダの安定株主であり続ける保障が失われたとき、危機感を抱いた井巻久一社長は、トヨタの渡辺捷昭社長(共に当時)と頻繁に会合していた」と当時の内情を語る。

これは業界内ではそれなりに知れ渡っていた話で、08年11月にフォードがマツダ株を売却することが決まったときも、引き受け先がトヨタでなかったことを意外ととらえる向きも多かったほどだ。

◆マツダハイブリッドは2013年登場か

両社とも今のところは否定するハイブリッドシステム供給話だが、これが実現すれば、マツダの量産ハイブリッドカーの登場は、トヨタの2モーターハイブリッドの基幹特許が切れる2013年になるとみられる。次期『アクセラ』という報道もあるが、現行アクセラは今年発売されたばかり。マツダ規模のメーカーが世界戦略車を4年でフルモデルチェンジすることは通常では考えにくく、もしアクセラになるとすれば、ハイブリッドカーの市場動向、技術動向を完全に読み違えていたために経営戦略の大幅な修正を迫られたことの証左と見ることができよう。

マツダは量産車のチューニングが上手く、欧州で優れたハンドリングを持つクルマに与えられるゴールデンステアリング賞をたびたび受賞するなど、運転を楽しめるクルマ作りについては一家言を持つメーカーである。が、一方で電気関連技術については企業規模を考えても弱いというウィークポイントを抱えていた。

2013年まではまだ4年もの月日がある。それだけの時間的余裕がありながら、もしトヨタのシステムを使うしか選択肢がないとすれば、マツダの主張する独自のハイブリッドシステムは、いまだラボラトリーでの実験レベルでしかないか、電池技術や制御技術などの立ち遅れから、性能面で先行メーカーをキャッチアップできる見通しが立っていない可能性が高い。

◆資本提携も…? 自動車再編のこれから

今後もガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関は、大手マスメディアが主張するほど急速に衰退するわけではなく、数十年スパンでクルマの重要な動力源であり続けることは間違いないところだ。が、一方で電気エネルギー利用技術の重要性が増していくことも確実な情勢。今後の原油価格やCO2規制などの動向によっては、電気分野で後れを取ることは自動車メーカーにとって致命傷になりかねない。

今のところはハイブリッドシステムの供給という噂でつながるトヨタ、マツダ両社だが、今後、技術供与にとどまらず、資本提携にまで踏み込む可能性も決して低くはないと思われる。グローバルの自動車再編はまだこれからが本番なのだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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