「“MINIらしさ”は変わらない新しさ」…MINIプロダクト・マネージャーに聞く

自動車 ビジネス 国内マーケット
MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI
  • MINI

2007年3月の2代目BMW MINI登場から2年半あまり。ハッチバックからコンバーチブル、クラブマンといった多種多様なMINIを街で見る機会が多くなったが、その一方でVWの新型『ポロ』やアルファロメオ『MiTo』など、ライバルと目される欧州コンパクトががつぎつぎと登場した。

これらのライバル車に対する認識と、気になる今後の展開についてMINIブランドのプロダクト・マネージャー、佐藤毅氏に話を聞いた。

◆常に新しいユーザーを獲得するMINI

----:BMW MINIとしては2代目のモデルが登場してから2年半あまりが経過しましたが、販売の状況はいかがでしょうか。

佐藤:MINIという偉大なブランドを引き継いだ先代モデルは、多くのお客様に受け入れていただきましたが、とても非常に自然な流れでこの2代目に引き継ぐことができたと思います。外観こそキープコンセプトですが、プラットフォームを全面的に見直しパワートレーンも全面変更しています。ハッチバック/クラブマン/コンバーチブルとラインナップも揃い、これらのラインナップ拡充でMINIに縁のなかった人にも興味を持っていただける機会も増えてきていますね。

----:現行モデルの販売は、先代からの代替が多いのでしょうか、それとも純粋に新オーナーが増えているのでしょうか。

佐藤:もちろんこれまでMINIにお乗りになっている方の代替需要もありますが、新しくMINIオーナーになられる方も多いですよ。というのは、MINIはこれまでの50年の歴史を見ても、常に新しい顧客層を獲得してきたブランドだからです。 たとえば現行モデルではハッチバック/コンバーチブルに加えてクラブマンという新たなボディスタイルを提案しましたし、また最近では50周年を記念した特別仕様車をリリースしています。“MINIは何か常に新しい提案をしている”と思っていただいていることが、新たなお客様を獲得できている要因なのではないでしょうか。

◆ライバルとは考えていない

----:2代目BMW MINIの発表以来、A-Bセグメントの欧州ブランドで、ライバルと目されるモデルがつぎつぎに登場しました。つい先頃は、VW『ポロ』も久方ぶりのフルモデルチェンジを実施しています。また、ポロだけでなく、プジョー『207』など価格的な面でバリューを持たせたモデルも相次いでいますが、これら他ブランドとの差別化をどのように考えていますか。

佐藤:まず、われわれとしてはライバルという意識は特に持っていないというのが本当のところなのです。他社のブランドにもいいところがあるのは当然ですし、MINIだけにしかない魅力もあります。そのMINI独特の魅力というのは、これまでの伝統や誰もが知っているデザイン面だけでなく、“ゴーカート・フィーリング”と呼ばれる走りの楽しさなど、どのブランドよりもキャラクターが立っているところにあるのだと思います。実際、MINIディーラーに訪れる方は比較目的よりも指名買いがほとんどです。

◆ワンにはワンの、クーパーにはクーパーの世界観がある

----:MINIの特徴のひとつとして、ハッチバック/コンバーチブル/クラブマンといったさまざまなボディバリエーションと、ワン/クーパー/クーパーS/JCW(ジョン・クーパー・ワークス)という性格の異なるパワートレーンを組み合わせるという、非常に幅の広いラインナップが挙げられるかと思います。実質単一車種でここまで幅広いバリエーションを持たせている理由について、お聞かせください。

佐藤:私たちとしては、MINIが単一の車種というとらえ方はしていません。ハッチバックもクラブマンも、全くちがう要素をもった別のクルマです。また、価格の高いクーパーSを頂点としたグレードのヒエラルキーを作っているわけでもありません。それぞれが多種多様なオーナーのライフスタイルを内包しています。ワンにはワンの世界観があり、クーパーもJCWもそれぞれの世界観がありますが、上下関係ではないのです。

----:MINIのオーナーは年齢的には非常に幅が広いそうですね。

佐藤:ええ。オーナーの7割は男性ですが、年齢層は免許取り立ての方から、リタイアされた方まで、非常に広いのはMINIならではの特徴です。クーパーSやJCWを選ぶ方はMINIで走るのが大好きな方、ワンは自分のライフスタイルを大切にするという大まかな傾向はありますね。

----:販売動向から、日本だけに顕著な傾向はありますか。

佐藤:日本ではクラブマンの販売比率が非常に高いことが例として挙げられますね。スタイリングやクラブドアの実用性もさることながら、“MINIは面白いことをやっていく“という斬新性を評価していただいている方が多いのではないでしょうか。

◆MINIの環境コンセプトは「ミニマリズム」

----:MINIがここまでエッジの立ったブランドに成長できたのは、50年という伝統もさることながら、BMWのセカンドラインという扱いをせずにまったく異なるキャラクターを持たせたブランド戦略を続けてきたからだと思います。では、技術面においてはMINIで採用されているテクノロジーはBMWで培われた技術とどのようにリンクしているのでしょうか。

佐藤:MINIだからといって技術面で妥協するということは絶対にありません。ターボエンジン技術や、電子制御式のウォーターポンプ、バルブトロニック、空力性能の改善など、BMWで培われたさまざまな環境対策技術を惜しみなくMINIに投入しています。BWMの環境スローガンは「エフィシエントダイナミクス」ですが、MINIはそのままシンプルに「ミニマリズム」です。方向性としてはBMWとMINIでは同じですが、MINIは特にクルマ本来の楽しさを追求しながら、小さなボディに技術を凝縮して環境負荷を“最小限”にしていく、という取り組みを端的に言い表しています。わかりやすいでしょう?(笑)

----:その「ミニマリズム」コンセプトですが、他社ではハイブリッドや小排気量の過給器エンジンなどでパワートレーンの環境技術を盛んにアピールしています。MINIを含むBMWグループとしてはこれらの取り組みをどうプロダクトに落とし込んでいくのでしょう。

佐藤:BMWグループでは、環境性能だけに特化したいわば“エコチャンピオンカー”は作りません。既存ラインナップの環境性能底上げを図りつつ、先進的な実験を通して、脱石油時代に向けたモビリティのあり方を検討していきます。空力、エンジン技術、トランスミッション、そして軽量化やリサイクルといったさまざまな面からラインナップ全体の環境性能工場に取り組んでいます。MINIもアプローチとしては基本的に同様ですが、独自の取り組みとして、ドイツや米国などで電気自動車『MINI E』の社会実験をおこなっています。

◆伝統の「メイフェア」、未来の「カムデン」

----:では話を戻して、現行モデルのMINIについてもう少しお聞きます。この秋に、新たに登場したMINI(カムデン/メイフェア)の特別仕様車について、ご説明をお願いいたします。

佐藤:ブランド創立50周年に連なる特別仕様車としては、この「メイフェア」と「カムデン」が最後のモデルです。

----:満を持しての登場ですね。

佐藤:まずメイフェアですが、これまでMINIの特別仕様車に同名の特別仕様車が何度か登場していたことからもお分かりのように、“伝統を今に引き継ぐ”ことをイメージしたモデルです。従来はクラブマンにしかなかった「ホットチョコレート」というブラウン系のボディ色をハッチバックとしては初めてラインナップに加えています。革シートやグリル備え付けのヘッドランプなどは往年のMINIを彷彿させる装備を加えました。

----:ではカムデンは。

佐藤:こちらは“近未来のMINIデザインの提案”を具体化したものです。ヘッドライト内部の造形や異なる色調のレザーを組み合わせるなど、内装のフェイシアにも先進的なスタイルを採用しました。いずれもクーパー/クーパーS双方のベースを用意しており、2010年7月までの期間限定生産という位置づけになっています。

----:メイフェアとカムデン、どちらが店頭では人気ですか。

佐藤:お店によってバラバラですね。メイフェアの引き合いが多いディーラーもあれば、カムデンが人気のお店もあるようです。どちらもMINIらしい個性を際だたせたモデルだと思いますよ。メイフェアはクラシカルな外観ですが、ゴーカート・フィーリングはそのまま継承していますから、キビキビした走りが楽しめるでしょう。

◆型にはまらない新しさ、それがMINI

----:個性的な特別仕様車は確かに魅力ですが、ファンとしては今後のバリーション展開も気になるところだと思います。先のフランクフルトモーターショーでは、ノッチバックのクーペモデルや、それをベースとしたオープンモデルもコンセプトカーとして登場しましたね。MINIとしては今後もバリエーションを拡大していくという意図の現れと考えてもよろしいでしょうか。

佐藤:最初にも申し上げましたが、常に新しい提案をし興奮や新鮮さを与えつづけることがMINIの個性です。MINIらしくさえあれば、ハッチバックあるいは2ドアという枠にとらわれる必要もないですし、更に言えば必ずしもコンパクトカーのサイズである必要もないはずです。以前はSUVのコンセプトカーを出展しましたし、フランクフルトではおっしゃったとおり2シーターのクーペモデルとそれをベースにしたオープンモデルも出展しましたが、これらも新しい提案の例と呼べるものです。もしかしたら、次のモーターショーでは、全長5mのコンセプトカーが出るかも知れませんよ。(笑)

----:では最後に、商品企画の担当者としてMINIブランドとは、どのような存在価値をもつものなのか、お聞かせください。

佐藤:MINIを表現する言葉は「センショーショナル」だとか、「エッジー」とか「カワイイ」とかいろいろありますが、オーナーの方々にとって、MINIとはそういった言葉を超えた特別の感情をもつことができるブランドだと言えます。

BMW MINIでは、これまでの伝統に加えて最新の技術を取り入れることで、“ゴーカートフィーリング”による走りの楽しさをはそのままに、クラストップレベルの安全性と環境性能を実現しました。日本を含む世界の方々に受け入れていただいたMINIですが、これからもひとつの型に収まることなく、環境技術の面でもラインナップの面でも新たな提案をしていきます。

《北島友和》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集