今回の東京モーターショーは、部品ブースが面白いというのは概報の通り。その一つ、ドイツの(と言っても今やグローバルなブランドだが)部品メーカーとして大御所のボッシュは、かなり盛りだくさんな内容で人気を集めている。
横滑り防止装置のESCの体験コーナーから、ハイブリッドカーの駆動システムを体験するペダリングマシン(これでエンジンの辛さが分かる?)、最新のクリーンディーゼルの仕組みが良く分かるエンジンのカットモデルなどクルマに詳しくないヒトでも、最新のハイテクの凄さを実感できる展示内容なのである。
しかしクルマ好きなら、ブースの中心に鎮座する巨大なエンジンに惹かれるハズ。これは、今2009年のルマン24時間レースで悲願の優勝を遂げたプジョー「908HDi」に搭載されていたV12ディーゼルだ。
5.5リットルのV12で、各バンクにタービンが与えられたエンジンは、エンジン高を抑えるためにバンク角が100度と広めになっているだけに幅広く巨大な印象を受けるが、シリンダーヘッド回りは実にコンパクトで、シンプルで綺麗なフィニッシュ。モックアップかと思ってしまうほどの端正さだが、1200Nm、700psを発生する強力なパワーユニットそのもので、これはスペアエンジンとしてルマンに持ち込まれた個体だと言う。
このエンジンが展示されているのは、直噴のピエゾ式インジェクターをはじめとしたエンジンマネージメントシステムなどをボッシュが手がけ、パワーユニットをプジョーと共同開発したからだが、注目は開発はに日本のボッシュ・エンジニアリングが関わっているということだ。2007年にボッシュから独立したこのスペシャルチームは、レースエンジンのマネージメントシステム開発や船舶、建設機械用など、少量生産機種向けの専門的な開発を請け負うエンジニア集団。
あのル・マンでの独走には、日本のボッシュのエンジニアの活躍があったと知ると、何だか誇らしい気持ちも湧いてくる。何よりボッシュの日本拠点の重要さが理解できるのだ。
クルマのハイテク化はますます進むばかり。今後もボッシュは日本や世界の自動車メーカーを陰で支えるサプライヤーとして活躍することになるだろう。