ホンダ『FCXクラリティ』のプラットフォームは、燃料電池車というまったく新しいパッケージに合わせ、ゼロから新規設計されたものだ。車体設計の責任者である本田技術研究所四輪開発センターの高橋俊樹氏は、「4輪の4ドアセダンという様式自体はこれまでのクルマと同じ。設計はそれほど難しくはなかった」と語る。
「いちばん工夫を要した部分は、スタックを積むセンタートンネル部分ですね。軽量化されたとはいえ重量のあるスタックを積むわけで、剛性は上げておきたい。また、万が一の事故の際にスタックが破損すると損害額が大きくなってしまうので、なるべく保護しておきたいというのも、センター部分を強固に作った理由です」
一方、通常のクルマより設計上有利な部分も少なくなかったという。
「もともと燃料電池車は、エンジン車に比べて重量物がボディの下部に集中しているため、最初から低重心なんです。また、エンジンに比べてボンネット内に収まるパワートレインが小さいため、サスペンションも余裕を持ってレイアウトできることも走りにはプラスです。いくら環境対応車と言っても、ホンダのクルマである以上、フニャフニャした走りなんて許されませんからね」
試乗コースであったツインリンクもてぎの外周路は、所によって急角度の曲がり角やS字カーブなどがあるが、FCXクラリティの動きは重量1.6t級のセダンとしては非常に軽快だった。