GPSケータイとの連携で住宅街での事故を防ぐ
この10年、クルマの安全性は飛躍的に進歩し、交通事故死亡者の数は激減している。日本ではIT新改革戦略で交通事故死亡者5000人以下の数値目標が掲げられたが、衝突時安全技術の向上や予防安全技術の相次ぐ実用化の奏功などもあり、これは早々に実現できそうである。しかし、その一方で、将来に向けた大きな課題となっているのが、歩行者の安全性確保である。
日産では、この歩行者事故の抑制において、急速に普及したGPS携帯電話との連携を模索。NTTドコモとともに、クルマから見えにくい場所で歩行者がいる場合に、GPS携帯電話から集めた情報を元にカーナビ上に注意喚起を促す「GPS携帯協調歩行者事故低減システム」の開発を行っている。
このシステムでは、歩行者のおおよその位置は把握できるものの、クルマと違って詳細な移動速度や向かっている方向まではわからない。そのため詳細な警告情報を出すのではなく、あくまで注意を促すだけに留まっている。また、歩行者すべての位置を確認し、その都度、インフォメーションを出すのは現実的ではないので、当初は子どもやお年寄りなど、ドライバーがより見落としやすい歩行者が対象になるだろう。
◆課題は携帯電話のバッテリー駆動時間
「GPS携帯電話の普及状況は申し分ないのですが、このシステムの実用化にあたり、課題となるのは(携帯電話側の)バッテリー駆動時間です。常に位置の測位と送信を行うと、すぐにバッテリーがなくなってしまいますから。歩行者事故の多い地域などに入ると自動的に位置情報通知がはじまるなど、実際の運用を視野に入れた研究や実証実験がさらに必要でしょう」(技術開発本部IT&ITS開発部 福島正夫氏)
例えば、NTTドコモではGPS位置測位だけでなく、基地局の位置情報から測位する「iエリア」という機能がある。こちらは基地局の位置情報と、常にやりとりされている制御信号をもとに位置の特定を行うので、GPS測位を常時行うよりもバッテリー消費を抑えることができる。そのためiエリア情報で歩行者が見通しの道路の見通しが悪いエリアに入ると、自動的にGPS測位による警戒モードに入るといった機能連係も考えられるだろう。
日産自動車とNTTドコモでは、2008年秋からこのGPS携帯電話連携の歩行者事故低減システムの大規模実証実験を行う予定である。