豪雨のサーキットで手にしてみた日産『GT-R』の第一印象は、目線がブレないということ、そして動きが軽いということだ。
目線がブレないのは姿勢がフラットに保たれているおかげ。とくに最高速170km/hを超える直線では、車体が空気の力で路面に押さえつけられているのが実感できる。そのときもサスペンションはしなやかに動き、抜群の接地感を伝え続ける。
1740kgもの車重に関わらず動きが軽く感じられたのは、1000rpm台後半から図太いトルクをタイムラグなしに供給し、瞬く間に速度計の針を跳ね上げるエンジン特性や、優れた前後バランスの恩恵であるコーナリング中も続く高い接地感のおかげだろう。
いっぽう、ブレーキング時だけは明確に重さを感じる。この速度感覚のズレには、なかなか慣れることができなかった。
コーナー進入時の反応はシャープというより正確。その後、アクセルを踏み込んでいくと後輪がむずがりだすが、すぐにトルクが前輪に伝わり、前から引っ張られるように脱出できる。独特の、いかにもGT-Rらしい走りは、その特性を引き出す歓び、そして凄まじい速さをもたらすものだった。
すべてが速さに直結し、余計な演出が徹底的に排除されたGT-Rの乗り味は、だからこそ清々しく、凄みも効いている。しかしいっぽうで、もう少し走りの実感を味わわせてくれても…とも感じた。現状はときに、さながら自分が操縦ロボットになったような気にさせられるのだ。これは性能指標としたポルシェ『911ターボ』との最大の違いである。
しかし、それに関しては開発ドライバーを務めた鈴木利男氏も「まだやり残したことは沢山あります。速さはある程度のものになりましたが、ヨーロッパ車のような操る醍醐味をもう少し出していきたいと思っています」という。
開発責任者の水野和敏氏も「完成度は70%。これからもっとよくなりますから」といっていたから、その方向性がどうなるかは解らないものの、今後の進化に期待できるといっていいだろう。