等間隔に立てたポールの間を、犬がすばしっこくスラロームする。愛犬の運動能力を競うあの手の種目を“アジリティ”と呼ぶ。「俊敏性」という意味だ。新型『Cクラス』の開発キーワードである。
試乗したのはスポーツ・サス付きの「C300アバンギャルドS」だが、たしかに操縦安定性は秀逸。まずどんな無茶をやらかしても、コーナリング中にクルマがイッパイイッパイに陥る気配がない。綱渡りのロープが、太い。
足まわりのこうしたフトコロの深さは旧型以来だが、アジリティの新型はさらに軽快感を身につけたのが新しい。一枚上着を脱いだようなスポーティな“かるみ”を感じさせるのだ。
しかも、乗り心地がすばらしい。スポーツモデルとなると、ファーストコンタクトからはっきりとスポーティな手ごたえを伝えてくるBMWとは“方針”が異なる。
エンジン自体の存在感をけっして過度に主張させないのもメルセデス流だ。欠点は、カルくなりすぎた内装か。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★☆☆
パワーソース:★★★★☆
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★☆
下野康史| モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い