【池原照雄の単眼複眼】都心の車速を倍に---経産省の環境・エネ戦略

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石油依存度を2030年までに80%に低下

経済産業省が自動車に関する環境・エネルギー戦略の一環として28日に発表した報告書で、東京など3大都市圏の平均走行速度を2030年までに現行の2倍に引き上げる目標を掲げた。車両そのものの制御技術やITS(高度道路交通システム)の進化、さらに道路インフラの整備などを融合させて大都市圏の交通をスムーズにというものだが、果たして……。

報告書は、運輸部門の石油依存度を2030年までに現状の100%から80%まで軽減するという国家目標実現に向けてまとめた『次世代自動車・燃料イニシアティブ』。

ハイブリッド車や燃料電池車、クリーンディーゼルといった車両技術の開発目標やバイオ燃料の普及促進など、環境負荷と石油依存の軽減、インフラ整備方策についてテーマごとにロードマップを提示している。報告書の検討では、短期間だが張富士夫日本自動車工業会会長と渡文明石油連盟会長も参画した。

◆パリと同じようにスイスイ走るように

このなかで、インフラ面では「世界一やさしいクルマ社会構想」を掲げ、大都市圏の車速倍増や排ガスを大幅に抑制するEV(電気自動車)社会システムの構築などを盛り込んだ。車速の引き上げは、交通密集地での渋滞緩和による燃費の向上を通じて排ガスの抑制を推進するものだ。

首都圏の場合、東京都心部の平均速度は約18km/hとされ、パリの26km/hやロンドンの30km/hと比べ、劣悪な交通環境に置かれている。これを2015年には現状のパリ並みの27km/h、2030年にはロンドンを上回る36km/hと今より倍の速度で走れるようにするのが目標だ。

◆首都圏の渋滞退治は環状道路整備に尽きる

都心部を平均車速30km/h台でスイスイ走れるとは、夢のような世界。報告書ではETCや高度な信号制御、隊列走行といったITSインフラの整備や、プローブ(フローティング)情報活用、自動運転など自動車側の進化を道筋として提示している。

ただ、肝心の道路インフラについては「都市道路整備」の必要性に触れるだけで、縦割り行政の限界を露呈している。首都圏の渋滞は、パリやロンドンにあって東京にはない環状道路の整備が進めば大きく改善する。東京の渋滞退治のポイントはそこにある。

こうした国家戦略にからむ方策は、そろそろ関係官庁合同で一体的にまとめてもよかろう。旧態依然の霞ヶ関の縄張りのなかで「世界1やさしいクルマ社会」の構築なんて都合のいいことはできない。

《池原照雄》

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