ピエモンテ州ブラ産のソーセージは肉が新鮮なため、そのまま生で食べる。トリノあたりではラードも薄切りにしてパンに載せ、ペロリと食べてしまう。いまどきのダイエット派は眉をしかめるかもしれないが、厳冬のアルプスで長年培われたカロリーを補給する食文化である。
見回せば、ビー玉のような色とりどりのクルマたちに囲まれている。クルマ好きなら、こうした風景の中で食べるのが一番うまい。
その間にもメンバーは、興奮のあまり(?)例の段ボールお姉さんに触れようとする観客を発見し、「踊り子さんに手を触れないでェ」と、往年の日劇ミュージックホールのようなアナウンスをしたりしている。
4 | 要・高いテンション |
クルマ界にはタキシード着用のディナーパーティも時折あるが、ボク個人的にはこうした気楽なピクニック風クラブのほうが妙に居心地が良い。なにより、一ガイジンに過ぎないボクのことを何年たっても覚えていてくれて呼び止めてくれるなんて、ありがたいじゃないか。
唯一大変なのは、会長夫人が「生ソーセージ連続喰い」を披露したら、こっちも「ヒューヒュー」とか派手な声でリアクションを示すか、もしくは対抗して連続喰いを披露しなくてはいけない空気が漂っていることだ。彼らのピクニックに加わるには、それなりの高いテンションが必要なのである。
筆者紹介:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA --- コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』『幸せのイタリア料理!』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)がある。新著に『Hotするイタリア』(二玄社)。 |