3 | まずいスパゲッティ |
イタリアでは、スパゲッティはフォークだけで食べる。スプーンは使わない。さらに、イタリア人が嫌う外人のスパゲッティの食べ方というのがある。スパゲッティをナイフで刻んでから食べることである。
麺の長さ、そしてそれをクルクルやって束ねたときの弾力も味のうちだからだ。なぜかそれを実行するのはイギリス人が多く、周囲のイタリア人は眉をひそめている。まあ、数年前にイタリアのテレビでは、ビスケットを“渡し箸”するTVCFが堂々と放映されていたのを考えると、イタリア人も他人のことは言えないが。
ところで、たとえいいオヤジになってもイタリア男の誰もが「世界一」と言ってはばからないのが、マンマ(母親)のパスタとソースである。対して、イタリア人の誰もが「ひでえ」と口々に言うパスタもある。特急ユーロスターの食堂車のパスタだ。
白いテーブルクロスに花瓶が置かれたテーブル、そしてパリッとした服装をしたウェイター、などというのは、もはや映画の中の話。今や多くのメニューは、“レンジでチン”だ。したがって、それをうまいなどというのは、噴飯ものなのである。
アウトストラーダのアウトグリル(食堂)のパスタのほうが、まだちゃんと伝統的な方法で茹でているだけマシである。