たしかに今の日本では、保守本流の中型セダンは「売れない」けれど、それはプロダクトそのものの力が足りないないことも大きい。改めてこの点を考えさせられてしまった。しかしアメリカではベストセラーの一角を占めるモデルのリニューアルであるはずなのだ。
'90年代のU.S.『カムリ』(2〜3代前)は、空間づくりも走りもよい意味でアメリカらしく、おおらかで素直なクルマだった。それが成功の根底にあったのではないかと思うのだが。
空間の立体形、着座姿勢、シートの作りなどすべてに類型的で、身体も感覚もしっくりこない。インテリア、とくに空調・音響操作系の造形や表現が妙に浅薄。
走らせても、自動車がタイヤで道路を踏んで動いてゆく、という実感がきわめて希薄。一般のドライバーだとすごく雑な運転になってしまう資質のクルマである。
足が素直に動かず、つねに細かく上下に揺すられ続け、加減速も粗くなるので、同乗者にとっても心地よい移動にはならない。
■5つ星評価
パッケージング:★☆☆☆☆
インテリア/居住性:★☆☆☆☆
パワーソース:★☆☆☆☆
フットワーク:★☆☆☆☆
オススメ度:☆☆☆☆☆
両角岳彦| 自動車評論家
1951年長野県松本市生まれ。モノごころついた時からクルマが好き。大学・大学院と自動車工学を修め、自動車専門誌を経て独立。自動車の工業製品としての本質を追究した評論活動を行なっている。