“ハイブリッド(hybrid)”という英単語を辞書でひも解くと、そこでは「雑種の」、あるいは「混成の」といった訳が見てとれる。今や、この言葉はエンジンとモーター双方を備えるクルマを示すものという認識を持つ人も少なくはなさそう。が、こうしてじつはそもそも“自動車用語”とは何の関係もないのがこの言葉でもあるわけだ。
それでは昨今、クルマの世界でそんな「ハイブリッド」が持てはやされる理由はいったい何だろうか? それは、ガソリンエンジンが宿命的に抱えてきたウイークポイントを電気モーターの特性で効果的に補完できることが明らかとなり、しかも技術的、かつコスト的に、それが世の中に対して受け入れられる土壌が整ってきたため、と考えてよさそうだ。
これまで用いられてきたエンジン=内燃機関には、ガソリン、ディーゼルを問わずそれが効率よく運転できる領域というものがある。端的にいえば、カタログに記載をされる「最大トルク」を発生する回転数付近で運転をさせたとき、そのエンジンはもっとも効率よく回ることができるというわけだ。
いっぽう、“そこ”を外すと燃費も出力も大きくダウンをしてしまう、というのが内燃機関の大きなウイークポイント。しかも、たとえ停車中でもエンジンは「自らの回転を維持できる最低限の速さ」で運転し続けなければならない。当然そこでは、消費する燃料、発生する出力のすべてが無駄になる。いわば「効率ゼロの状態」がご存知このアイドリングという状態だ。
また、電気モーターはエンジンとは逆に、その特性上「低回転になるほどに強さを発揮する動力源」。そんなエンジンとモーターの“いいとこ採り”を行なうことで両者の弱点を補完しあい、エンジンを単体で用いる場合、あるいはモーターを単体で用いる場合では成し得ない性能を実現させようというのが、複数の動力源を用いるハイブリッドカーの狙いどころ。そんなハイブリッドのシステムに世界の自動車メーカーの中でもっとも強い期待を抱き、もっともエネルギーを注いでその開発に取り組んで来たのがトヨタ自動車だ。
そしてついに1997年、社運を賭けたトヨタのハイブリッドモデル量産計画は世の中に日の目を見る。この年の末、注目の中で発表されたのが「21世紀に間にあいました」のキャッチフレーズとともに登場の初代『プリウス』である。(つづく)