【AutoStanding】渋滞中はクルマ選び!? …SAにショールーム

自動車 ビジネス 企業動向

◆高速道路にショールーム開設の動き

中日本高速道路がサービスエリア(以下、SA)に自動車のショールームの開設を検討している。ショールーム開設の候補となるSAは東名道の海老名(神奈川県)、足柄(静岡)、上郷(愛知県)、中央道の談合坂(山梨県)など300〜500台が駐車できる大型SAで、トヨタ自動車など国内大手自動車メーカーと交渉中とのことである。中日本高速道路は、今年の10月にも第一号をオープンさせたいとの意向だ。

自動車ショールーム以外にも、地元でとれた野菜を販売する店舗や、テナント評価制度を設け評価結果によってはテナントを入れ替える仕組みを導入するなど、高速道路各社によるSAのサービスやサービスを提供する仕組みを見直す動きが活発化している。これら一連の施策からは、道路公団民営化を発端として収益の向上に迫られている高速道路各社の事情が伺える。

一方で国内自動車市場は頭打ちであり、高速道路のサービスエリアという従来カスタマータッチポイントとしては活用されていなかったスペースを、商品の認知度向上や潜在的ニーズ掘り起こしの場として活用するというアイデアは、自動車メーカーも一定の関心を持つに違いない。まずは自動車メーカー側の立場から、高速道路ショールームの活用の視点や方向性について考えていきたい。


◆SAのユーザーの特徴

高速道路ショールームの顧客となるSAのユーザーはどのような特徴を持っているだろうか。

1. クルマの購入を目的としていない

SAのユーザーは二つに大別されると考えられる。すなわち、利用の中心と思われる運送会社を始めとした日々の仕事で高速道路を使用する業務ユーザーと、休日の利用が中心であるファミリーを始めとした一般ユーザーである。業務ユーザーと一般ユーザーの双方に共通しているのは、SAを利用する目的は休憩であり、一義的にはクルマの購入を目的としていないということだ。

運転者だけでなく同乗者も、長時間のドライブで疲れたり、イライラ感が溜まっている顧客が多いと思われる。特に業務ユーザーの場合は特徴的だろう。そのような顧客に通常ディーラーで展開されているような営業アプローチをしても、効果は期待できないどころか、「急いでいる、休みたい」という顧客の立場を考えないブランドとして受け止められ、かえって顧客獲得の妨げとなってしまう可能性すらある。だから営業(売り込み)の場としては適さないだろう。

2. 乗用車を保有している可能性が高い(バイク運転者を除く)

少なくとも業務ユーザー、一般ユーザー双方ともに運転免許保有者ではある(もしくはファミリーなどを考えると運転免許保有者が含まれる)。また、一般ユーザーは乗用車を保有している。業務ユーザーが使用している車の所有者は会社であろうから、乗用車を保有しているとは限らない。ただ、業務ユーザーにおいても相当数が個人として乗用車を保有していると考えてよいのではないだろうか。

3. 様々な属性のユーザーが訪れる

SAには例えばマーケティングで顧客細分化の基準として用いられる以下において一般的な販売・販促施設(ディーラー店舗や各種イベント会場)に比較して多様なユーザーが訪れる。

・気候や地理といったジオグラフィック基準
・性別、年齢、世帯、宗教といったデモグラフィック基準
・価値観、ライフスタイルといったサイコグラフィック基準
・お得意様、一見さんといった行動変数基準

また保有車種も様々であるし、車齢・コンディションや、買い替えタイミング、車検タイミングでみても、様々なユーザーが訪れる。

4. 一般ユーザーは団体(ファミリーや友達)が多い

一般ユーザーに関しては個人で利用するユーザーは少なく、ファミリーや複数のファミリーまたは友達等の団体で利用していることが多いのではないだろうか。

総じていえば、顧客の量と質でみると、ディーラー店舗や各種イベント会場と比較し、量という面では多種でありかつ多く、質という面では、自動車販売を目的とすると低いといえる。

こう考えるとトヨタが運営するお台場のメガウェブも同種の特徴をもっている。お台場という町全体をSA、メガウェブを高速道路ショールームとして捉えると、お台場にはレジャーやショッピング施設が多数あり購買意欲が高まりやすい環境にあることや、総滞在時間が長いという特徴がある。一方でSAにはレジャーやショッピングに目的を限定していないので、より幅の広いユーザーがいることや、SAにあるのは休憩所やレストランなどで、お台場と比較し目立った施設がないので、相対的にショールームが目に付きやすく集客力が高まる可能性もあるのではないだろうか。


◆高速道路ショールーム活用の方向性

上記のSAのユーザーの特徴を考えると次のような活用の方向性が考えられる。

1. AIDMAのAttentionとしての位置づけ

自動車に限らず購買行動をするまでの顧客の心理的なステップは、Attention(注目する)、Interest(興味を持つ)、Desire(欲しくなる)、Memory(検討する)、Action(購買する)といわれている。

乗用車を保有する様々な属性の顧客に対してAttention惹起活動を行うことができる。テレビでのCMとは違い双方向でのコミュニケーションが可能であるから、疲労感やイライラ感を取り除くことを掴みとしたり、家族など団体客のAttentionを惹くような活動することで高速道路ショールームを効果的に活用できるのではないだろうか。例えば、ブランドイメージや認知度の向上に注力しロボットなどを登場させ自動車のショールームという言葉にとらわれない(クルマすら配置しないことも考えられる)内容にしてはどうだろうか。

また、例えば全国どこのディーラーでも使えるオイル交換無料券などを配布するといったInterest惹起活動以降のステップに繋げていくことも重要である。

2. オクサマを狙う

自動車の購買を決めるのは財布を握っている妻であることが多いと言われている。しかも妻はなかなかディーラー店舗に訪れてくれず購買までのステップのボトルネックとなっているというのはよくある話だろう。SAの一般ユーザーには家族の顧客も多いであろうから、ディーラーでは集客しづらい妻を狙ったAttention惹起の仕組みを設けることで、Interest惹起活動以降のステップをスムーズに進められる可能性もある。

3. 顧客情報収集の場として活用

様々な顧客がいるので、一般に自動車メーカーが顧客分析を行う際に、アクセスが難しいといわれる他社メーカーに乗り換えた顧客や、自社のターゲット顧客ではあるが自社に呼び込めずにいる顧客にアクセスが可能だ。

そうした顧客に向け、なぜ自社から乗り換えたのか、振り向いてくれないのかといったアンケートを実施し、顧客情報収集の場として活用できるのではないだろうか。この場合、物理的にショールームを開設する必要すらないかもしれない。SAとアライアンスを結び情報収集業務をアウトソースするといった関係も考えられる。

4. マルチブランドショールームとしての可能性

これまで述べてきたように高速道路ショールームは販売には適さない。しかしながら、販売する場ではなく見せる場であるからこそメーカーの壁を超えたショールームを開設可能なのではないだろうか。販売の現場では家電量販店的なマルチブランドストア(併売店)は御法度だが、ショーケース機能に徹する限りはモーターショーと同様に複数銘柄が横並びで陳列されることに自動車メーカーも異を唱えないはずだからである。

さらに、販売機能を持ったショールームは、入るやいなや販売員が近寄ってきて商談(売り込み活動)が始まることが普通で、顧客がそれを嫌がりショールームから遠ざかっている一面もあろう。見せる機能に絞ることで従来接点を持つことができなかった顧客を誘導しやすくすることができる。


◆不動産デベロッパーとして高速道路会社の役割

次に高速道路会社の役割について考えてみたい。高速道路ショールームや地元の野菜を販売するテナントを開設するなど一連の施策の中で高速道路会社の役割は、商業施設を開発する不動産デベロッパー的役割を担っているといえるだろう。

テナントの誘致は不動産デベロッパーの仕事の一つにすぎない。しかもSAという場を単に提供するだけでは誘致すら難しいだろう。具体的には以下のような役割が求められると考える。

1. SAの魅力を分析・訴求する

テナントとしての魅力をアピールするために例えばSAユーザーや駐車する車種の特徴など、これまでに無い切り口や、これまで以上の細やかさでSAを分析・訴求することが必要になるだろう。

2. テナント出店側の負担を減らす工夫をする

高速道路ショールームも、乗用車に限れば休日こそ賑わうかもしれないが平日は業務ユーザーが多く閑古鳥が鳴いてしまうという可能性もある。例えば土日は乗用車向けのショールームとして平日は商用車向けのショールームとして活用したり、平日と休日でテナント料に差を設けるといった工夫が考えられる。

3. 他施設とのシナジーを考える

単にショールームだけではなくカフェショップやギャラリー等を併設することで、滞在時間を伸ばしたり、特にカフェショップは休憩目的で訪れるユーザーの集客力を高めるといった効果が考えられる。もっと言えばSA全体を俯瞰して顧客導線を設計し直し、必然的な形でSAユーザーがショールームを訪れざるを得ないような仕掛けを用意することも重要であろう。

4. SAの認知度や集客力を高める

各種イベントや広告によりSA自体の認知度や集客を高めることも不動産デベロッパーの仕事である。イベントであれば自動車に限らず流行りモノのショーや、広告であれば、他SAを含めてチラシを配ったり場合によっては、メディアも利用することも考えられる。

5. 自社の持つビジネスインフラを活用する

集客対象も何も高速道路利用者に限ることはない。というのも高速道路各社はETCというビジネスインフラを保有している。SAの出入りにETCをうまく使えば高速道路外へも集客対象範囲が広がるのではないだろうか。


◆まとめ

高速道路ショールームを自動車メーカー側からはAIDMAのAttention惹起活動や顧客情報収集の場、さらにはマルチブランドショールームという販促活動の場として、いってみればマーケットのフロントに位置づけて活用することを提案してきたが、これは別にSAという特定の舞台に限った話ではなくあらゆる未活用空間を顧客との接点として再定義してみることが重要だと考える。

SAのケースと同様に多くの未活用空間には、いますぐ購買に繋がる顧客は少ないかもしれないが、Attentionの段階から顧客と関わりを持ち良好な関係を築くことができれば、いざ購買する時に、購買までのステップを効率的に進められたり、他社との比較検討する過程で優位に働くという意義が考えられるからである。販売ではなく販促施設という意味では、高速道路ショールーム以外にも活用の可能性が残されているのではないだろうか。

また高速道路会社側からは、不動産デベロッパーとしてはSAという場所だけ提供するだけでは、不十分で自社の持つビジネスインフラを自身のマーケティング活動を通して用途や価値を広げたり、高めたりして収益の幅や大きさをコントロールすることが重要だと述べてきた。そして、このことは高速道路各社だけにいえることではなく、鉄道・百貨店・通信キャリアなどあらゆるインフラ事業者にいえることだろう。

そのために自社が保有する資産を高める際に、まず資産の価値を分析したり、他資産との組み合わせを考えたりすることは、いずれの会社においても出発点となることであろう。

一自動車ユーザー、高速道路利用者として高速道路ショールーム(できればマルチブランドショールームとして)が開設されることを楽しみにしている。
《》

編集部おすすめのニュース

特集