パワートレインの一大転換期
トヨタ自動車がハイブリッド車の普及でより明確な目標を立てた。これまで渡辺捷昭社長が「2010年代の早期」としてきた年産100万台突破の目標を2012年と掲げたのだ。同年にはレクサスを含むトヨタ車の1割近くがハイブリッド車となり、後年に振り返ればクルマのパワートレインの一大転換期だったということになろう。
1997年末に初代『プリウス』による世界初のハイブリッド車量産が始まって、足掛け10年。この間、『クラウン』に搭載した「マイルドハイブリッド」のように中途半端に終わったものもあったが設定車種を順次拡大、システム自体の改良も重ねてきた。
昨年の世界販売は23万5000台まで伸ばしている。それでも米国を中心に常時バックオーダーを抱える。今年は国内外でその1.5倍に当たる約37万台を生産する計画だ。年末には日産自動車向けのシステム供給(『アルティマ』に搭載)も始まる。
◆最早、トヨタでは「ニッチ」ではない
トヨタ車でのハイブリッドは今年、4.5%を占めるまでウェートは高まる。「ハイブリッド車は、まだニッチ市場」(日産自動車のカルロス・ゴーン社長)という指摘は、ことトヨタでは当たらなくなる。
ハイブリッドの展開は同社のプレミアムブランド「レクサス」でも本格化してきた。3月には初めてFR用に開発したシステムを搭載したレクサス『GS450h』を投入。26日にはフラッグシップ『LS』のハイブリッドも日本でお披露目される。発売は来春の予定だ。
◆レクサス販売増の新たなカードに
高級車へのハイブリッド展開は、当面トヨタの独壇場。プレミアムブランドに新たな価値を付加するテクノロジーであり、世界でレクサスをもう一段飛躍させることになろう。実際、『GS450h』は発売1カ月でGSシリーズのガソリン車にほぼ匹敵する受注を獲得している。手応えは充分だ。
トヨタの開発部門を担当する瀧本正民副社長はかねて、「個人的にはすべての車種にハイブリッドを設定したい」と主張してきた。トヨタでは究極の環境対策車である燃料電池車も基本制御方式はハイブリッドと同じ。
だから同社では「燃料電池ハイブリッド車」と呼んでいる。将来にわたってハイブリッドは、同社が環境問題を克服するための「キーテクノロジー」(瀧本副社長)であり続ける。100万台は、その一里塚でしかない。