「最初から軽自動車の車体寸法枠を意識したデザインはやりたくなかった」。ホンダの新型軽自動車『ゼスト』のエクステリアのデザイナー、中井英理氏は、デザインの意図について語る。
中井氏はこれまで、初代『CR-V』、2代目『ステップワゴン』、現行『オデッセイ』など、比較的大柄なモデルを手がけてきたエクステリアデザイナーだ。
軽自動車についてはゼストが初めての作品となるが、2004年の第38回東京モーターショー(商用車ショー)にホンダが出品したコンセプトカー『PV』を手がけた。後方に切れ上がるボディ下部のプレスライン、明瞭なフェンダーアーチ、前後で段差のあるグラスエリア下端など、ゼストのデザイン面の特色の多くがPVから受け継がれてきたものだとわかる。
「デザインの初期では、軽自動車の枠にとらわれず、自由にデザインし、後でそのデザインを軽自動車の寸法に抑えるというアプローチを行いました。ボリューム感を出すため、グラスエリアを高くして、ボディに厚みを持たせました。ただ、そのままだと重々しすぎるので、ドアのラインをキックアップさせたり、ルーフを弧状にしたりといった工夫を行いました」(中井氏)
ホンダの軽自動車の主軸モデル『ライフ』が、もっぱら女性ユーザーに受けていることから、男性ユーザーへの訴求に軸足を置いたというゼスト。
「男性ユーザーの軽自動車に対するイメージは、奥様のクルマに仕方なく乗ったりと、あまりポジティブではないケースが多い。そういった男性ユーザーの方々が進んで乗りたくなるような、『乗っている姿が格好いい』と思えるデザインに仕上げたつもりです」(中井氏)