シトロエニストとしては、うれしくて、そして“惜しい”クルマである。
まずうれしいのは、すっかり「乗り心地を忘れたシトロエン」になっていた個性派フレンチが、再びお家芸に目覚めてくれたこと。高性能3ドアのVTSでも、ストローク感のあるフラットライドな足まわりがうれしい。金属バネの現行シトロエンとしてはもっとも乗り心地のいいクルマである。
惜しいのは、ステアリングだ。輪っかの部分しか回らない“センターフィックス”方式はおもしろいのに、肝心の操舵力をなぜこんなに重くしたのか、わからない。快楽主義車のフランス車がこんな味つけを選ぶとは。「ナメんなよ、ドイツ車」ということなのかもしれないが、だとしたら、大いにアナクロだ。最近はメルセデスもBMWもアウディも運転操作力の軽減に努めているのだから。
非力な1.6リッターにはMTがほしい。ベストバイは5ドアの2.0エクスクルーシブである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★☆☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★☆☆
フットワーク:★★★★☆
オススメ度:★★★☆☆
下野康史| モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い。