次期『シビック』用のハイブリッドシステムとして発表された新型ホンダ「IMA」は、構造やロジックは現行と似ているが、使われている要素技術はことごとく一新され、スペックも向上している。
1.3リットル直4エンジンと薄型ブラシレスモーターという組み合わせは現行と同じだが、エンジン出力は現行比7kWプラスの70kW(95ps)に増強された。モーターの出力も平角コイルやローターのIPL化により、5kWプラスの15kWとなり、システム出力は両者を単純合算した85kW(115ps)。
数字上はシステム出力82kWのトヨタ『プリウス』とほぼ並んでいる。最大トルクはトータルで167Nm(17kgm)と、プリウスのモーターのスペックに劣るが、エンジンが主動力であることから、回転上がりでカバーすることができる。
この新型IMAを搭載する次期シビックは、CVTモデルで10・15モード燃費が31km/リットル前後になる見通しだという。
この数字は当面の競合相手であるプリウスの標準タイプ「S」の35.5km/リットル、充実装備「G」の33km/リットルより下、スポーティグレード「ツーリングセレクション」の30km/リットルより若干上というポジションに位置する。
パラレルハイブリッドで、モーターのみでの走行モードを持つプリウスを10・15モード燃費で上回るのは非現実的だ。モード燃費での勝利にこだわりすぎると、エンジンの熱効率と低公害性のバランス、ドライバビリティなどを犠牲にしてしまう。
その点、無理にプリウスに勝とうとしなかったホンダの開発陣は、競争好きな社風を考えるとかなり冷静な対処を見せたと言える。
本田技術研究所でモーター開発を担当する小川博久氏は「まだテスト中なのですが、実走行ではプリウスと互角の燃費性能を達成できると思います」と主張する。同研究所の白石基厚社長も「10%程度の10・15モード燃費の差だけでユーザーの選択が決定づけられるわけではない」と語る。
とはいえ、環境性能の高さを売りにするハイブリッドカーはイメージ先行型商品でもあるため、ユーザーにとって燃費の数字は決して軽いものではない。新型シビックが風穴を開けることができるか。