“シグマ・アーキテクチャー”という新しい車台を使った新世代キャディラックのデザインにはどうしてもなじめないが、『STS』のカタチはこれまででいちばんとっつきやすい。
旧型『セヴィル』はけっこうスタイルで買っている人も多かった。“セヴィル・ツーリング・セダン”の頭文字を車名にした後継モデルも、そういう意味ではまずまず穏当なスタートじゃないだろうか。
運転していちばん印象的だったのは操縦性だ。4.6リッターV8のパワフルな大型FRとはいえ、18インチのヨンゴーを履く足はコーナーで攻め込んでも非常に安定している。アメ車としてはよかったが、あまり無理難題を吹っかけるとアゴを出した旧型セヴィルより確実に進歩している。
つくづくキャデラックも変わったものだと思う。でも、それがキャディラックの目指す方向なのだろうか。方向がわからなくて、闇雲に操縦性能を高めているような印象が拭えない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★☆☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★☆☆
フットワーク:★★★★☆
オススメ度:★★★☆☆
下野康史| モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い。