じつは少し前、米ロサンゼルス郊外のショートサーキットで『S60R』米国仕様を全開走行させた。走行直前まで、「それなりには走るはず」と思っていた。なぜなら、ボルボの“R”はレーシングではなく、レファイメント(洗練)の意味なのだから。
ところが、私はまんまと裏切られた。まず、ブレンボブレーキとの相性がよい。減速力はもちろん、コントロール性がよい。じつは、PAG(フォード資本のプレミアム系ブランド:ジャガー/ランドローバー/ボルボ)の中で以前、「名ばかりハイパフォーマンスブレーキ」を体験しているので、ちょっと心配だった。
そして、ドライバーとシャーシとエンジンの(感覚的な)連動性が見事だ。これは、電子制御デバイス“FOUR-C”の効果(別稿で詳細説明)だけでなく、ボルボの真骨頂である「世界トップクラスの安全性」シャーシが、高剛性と柔軟性のバランスに成功したからだ。加えて、ターボがS60Rの回頭性のよさを、よりリズミカルに演出する。
では、走行加重負荷が少ない日本の一般走行ではどう感じるのか。先に乗った『V70R』より、パワステの初期設定が微少に重く、乗り心地はカッチリとした印象。高速道路を経て、ワインディングへ入る。弱アンダーステアを感じながらペースを上げる。と、明らかに、アメリカで感じたあの「洗練さ」の感覚が甦ってきた。ライバルのドイツ車たちと、「ふた味違う」このスポーティ感。ボルボのハイパフォーマンスAWDセダンが、ついに独自の道を切り開いた。(つづく)