トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VXトヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】
新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
第4のランドクルーザー
「きれいに維持されていますね。レストアしたのかな?」
オフロードコースの下見をするためにまず乗り込んだ“70”ショートの助手席で思わず口に出してしまった。博物館から引き出して来たデモカーか何かと思ったのだ。何しろ、国内では売っていない3ドアショートボディーのうえに、シートはモケット地で後席には金属製の灰皿もあり、何より三角窓(知ってるかな?)が付いている! でもATだし、なんだか不思議な仕様だと思ったら、走行1500kmほどの最新の“70”だという。中南米およびアジア市場向けのれっきとした新車の“70”ランクルだった。お見それしました。ハイブリッドパワートレインを積む最新モデルだけでなく、40年前とほぼ変わらないワークホースが今も世界各地で働いているのである。
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トヨタ車随一の歴史を誇る(1951年の「トヨタ・ジープ」を起源とするから75周年)ランクルファミリーに新たに加わったのがランドクルーザー“FJ”である。2025年のモビリティショーにも出展され、2026年5月に国内発売された“FJ”は、いわばランクルファミリーの末っ子で、そのボディー寸法は全長×全幅×全高=4575×1855×1960mmでホイールベースは2580mmというもの。全長ほぼ5mで全幅2mの“300”や“250”に比べると明らかに小さい。ランクルには憧れるけれど、さすがに大きすぎて持て余すと考えている人への回答である。ちなみに“300”と“250”のホイールベースは2850mm、“70”は2730mmである。
ランドクルーザー“FJ”は「VX」のみのモノグレード(本体価格450万0100円)、エンジンはランクル“250”にも積まれている2TR-FE型2.7リッター4気筒自然吸気で、163PS/5200rpmと246N・m/3900rpmのスペックも同一である。

初めての海外製ランクル
四隅を丸めたサイコロのようなボディースタイルは、本格的クロスカントリービークルというよりはポップで現代的なSUVを思わせる。“FJ”は「Freedom & Joy」というコンセプトの頭文字であるとともに、かつての40型ランクルや一時国内でも販売されていた「“FJ”クルーザー」を想像させることは言うまでもない。
ランクル“FJ”は「ハイラックス」と同じタイのバンポー工場製であることが特徴だ。世界に誇るランドクルーザーは、“300”も“250”も“70”も基本的に国内生産で、それが世界190カ国以上に輸出されてきたが、“FJ”は国内向けとしては初めての海外生産のランドクルーザーということになる(今は中国で「プラド」名の“250”を生産している)。ご存じのようにランクルシリーズは(特に“300”にモデルチェンジした2021年ごろから)国内外で大人気であり、国内の複数の工場で(トヨタ車体の吉原工場と富士松工場、トヨタ田原工場、トヨタ羽村の羽村工場)フル生産しているにもかかわらず、買えないクルマとして有名(?)だ。海外生産するのはそんな背景もあるはずだ。
さらに“FJ”は主に新興国市場向けのトヨタの世界戦略車であるIMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プラットフォームをベースにしており、ハイラックスと同じ工場でつくるのが合理的である。

ランクルの名に恥じない走破性
もちろん、末っ子といえどもランクルを名乗るからには譲れない要件がある。伝統の「ランクルネス」、すなわち信頼性、耐久性、悪路走破性を継承するためにラダーフレームやボディーを強化、さらに“250”と同等の最低地上高とアプローチ/デパーチャーアングル、“70”シリーズと同等のホイールアーティキュレーション(ホイールの浮きづらさ)を確保したという。間違っても“なんちゃって”じゃないの? などと言われてはランクルのブランドに傷がつくというものだ。
ランクル“FJ”はハイラックスと同じくセンターデフを持たないパートタイム式4WDを採用。後輪駆動のH2、直結4WDのH4とL4の切り替えは“70”のような渋く重いレバー式ではなく、コンソールのダイヤルで簡単に切り替えできるのが今風だ。そのすぐ隣にはリアデフの電動ロックやDAC(ダウンヒルアシスト)のスイッチも備わっている。フロントはダブルウイッシュボーン式の独立、リアは4リンクのリジッドだがハイラックスとは違いコイルスプリングを採用している。
さなげアドベンチャーフィールドの林間コースは幅が狭く急斜面もあり、ビギナーにはなかなか手強いコースだが、前日までの雨でぬかるんだ登り坂もそのままに試乗させる時点で開発陣の自信がうかがえた。実際、急斜面でタイヤが空転しても即座にアクティブトラクションコントロールが介入し、歩むような速度で(4Lモードのリアデフロックなし)ジリジリと登っていく。“300”や“250”ほどの楽ちんさはないけれど実に頼もしく、安心して走ることができた。

オンロードでも大丈夫
フレーム付きクロスカントリービークルの課題は、悪路での接地性や走破性とトレードオフの関係になるオンロードの乗り心地と安定性である。ランドクルーザー“FJ”はオフロードコースへの往復で走った一般道でもまずまずの乗り心地を備えていた。路面の荒れた場所ではさすがにブルンという振動を抑えきれないものの、直接的なショックはなく、スタビリティーも十分だ。同じエンジンと6段ATを積む“250”の「VX」に比べると、“FJ”はボディーがコンパクトで車重も1960kgと大きな差があるため明らかに身軽で(“250”のガソリンVXは2240kg)、加速時もパワフルとはいえないものの軽快感がある。これなら日常使用でも億劫になることはないはずだ。
燃費改善策が可変バルブタイミングのみ(電動パワーステアリングも備わらない)という“FJ”のWLTCモード燃費は8.7km/リッター。“250”VXの7.5km/リッターよりはだいぶいいし、パートタイム式4WDシステムを持つクロスカントリービークルとしてみれば妥当なところかもしれないが、ちょっと現代的な数値ではない。燃料タンク(無鉛レギュラー)は63リッター入りである。この燃費さえ気にしなければ、室内も実用的でルーミーな“FJ”は価格も含めて魅力的だ。案外、若者世代ではなく(若者はもっとクラシックな本物志向ではないか)、扱いやすさを重視するオジサンオバサン世代に人気が出るのではないだろうか。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4575×1855×1960mm
ホイールベース:2580mm
車重:1960kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.7リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:163PS(120kW)/5200rpm
最大トルク:246N・m(25.1kgf・m)/3900rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ミシュラン・プライマシーSUV)
燃費:8.7km/リッター(WLTCモード)
価格:450万0100円/テスト車=457万6473円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション 地上デジタルテレビアンテナ(1万7600円)/アシストグリップ<シンプルタイプ>/エアコンドリンクホルダー<運転席用>(4983円)/フロアマット<ロイヤルタイプ>(4万1250円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1703km
テスト形態:オンロード&オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター










