「事故死ゼロ」と「移動の自由」の両立へ…トヨタとホンダが「ITS世界会議」で示した次世代技術

「事故ゼロ」と「移動の自由」の実現に向け、車両の知能化とインフラ協調による安全支援を紹介したトヨタブース
  • 「事故ゼロ」と「移動の自由」の実現に向け、車両の知能化とインフラ協調による安全支援を紹介したトヨタブース
  • クアルコムとの連携で開発を進めるデュアルバンドV2X車載半導体。760MHz帯と5.9GHz帯に対応し、2028年以降の車載化を目指す
  • デュアルバンドV2X車載半導体の狙いを示す解説パネル。地域ごとに異なる通信への対応を共通化し、開発コストの最適化と普及促進につなげる
  • 自転車のハンドル部に装着したパナソニック製の自転車用ITS車載器。クルマや道路設備との通信を通して、自転車にも安全支援を広げる
  • 既存車への後付けを想定した通信型ドライブレコーダー。画面表示や音で車両の接近などを知らせ、買い替えを伴わない安全支援の普及を目指す
  • 太陽光パネルを備えたITS横断者注意喚起灯。横断前にボタンを押すとLEDが点滅し、ITS通信でも対応車両に歩行者の存在を知らせる
  • ITS横断者注意喚起灯の仕組みを紹介するパネル。積水樹脂の既存の注意喚起灯にも通信機能を追加でき、信号のない横断歩道での安全確保を支援する
  • 展示の狙いを説明するトヨタ自動車 デジタル情報通信本部 本部長の山本圭司氏

トヨタ自動車と本田技研工業は韓国・江陵の「ITS世界会議2026」に出展し、先読みと通信を核とする「事故死ゼロ」と「移動の自由」の両立を目指す姿勢を示した。これは日本自動車工業会による9月17日の記者会見での発言を踏まえたものとなる。

◆トヨタ自動車「車両の知能化とインフラ協調を両輪に」

トヨタが展示で示したのが、高齢化や地域交通の縮小が進む中で、安全性を高めつつも誰もが移動できる環境をどう維持するかということ。この展示でトヨタは、自動運転や高度な運転支援によって車両自身の能力を磨くとともに、道路設備や周囲の交通参加者と情報を共有し、交通社会全体を支える方向性を示したのだ。

自動ブレーキなどの予防安全技術は進化しているが、その一方で建物の陰から接近する自転車や、前方車両に遮られた落下物など、車載センサーだけでは捉えられない危険もある。こうした「見えない」「見えても間に合わない」場面を、インフラや周囲の車両から得た情報で補う考え方を示したというわけだ。

これは自工会が9月の会見で示した、自動運転技術の開発で各社が競争する中で、社会基盤の整備や普及に向けて協調していくという方針とも重なる。トヨタは車両開発と社会基盤づくりを並行して進め、事故の削減と移動手段の確保につなげようとしているのだ。

◆2028年から先読み支援を段階的に展開へ

展示の狙いを説明するトヨタ自動車 デジタル情報通信本部 本部長の山本圭司氏

ブースで示されたロードマップでは、2028年ごろから情報管制の仕組みを特定地域で動かし、先読みによる運転支援を段階的に発展させる構想を提示した。落下物や事故、交通規制など、自車から直接見えない情報を提供してドライバーの判断を支え、さらに事故多発地点での緩やかな減速支援や、高速道路の合流支援などへ対象を広げていく。

その先には数秒後の危険を予測する支援も見据えるが、2028年にすべての機能を一斉導入するという意味ではない。インフラ整備と効果検証を重ね、情報提供・注意喚起から車両の動きに関わる支援へと高めていく計画ということだ。

運転者への伝え方も研究する。ドライバーモニターに加え、AIとの対話を通じて安全な運転を促す仕組みも構想に含めることで、危険を知らせるだけでなく、状況を理解し、余裕を持って行動できる支援を目指す。運転に不安を感じる人を支えることは、移動の機会を維持する上でも意味があると言えるだろう。

◆デュアルバンドV2X半導体で通信の選択肢を広げる

クアルコムとの連携で開発を進めるデュアルバンドV2X車載半導体。760MHz帯と5.9GHz帯に対応し、2028年以降の車載化を目指す

協調型の安全支援を実現するには、必要な情報を確実に届ける通信が欠かせない。その基盤としてクアルコムとの連携で開発を進めているのが、デュアルバンドV2X車載半導体だ。V2Xは、クルマがほかの車両や道路設備などと情報を交換する技術であり、760MHz帯と5.9GHz帯に対応して、2028年以降の車載化を目指す。

この開発の背景には、日本においてITS Connectに使われている760MHz帯は、電波が障害物の背後へ回り込みやすく、見通しの悪い交差点での通信にも適している特徴を持つ。一方、海外では5.9GHz帯の活用が進む。両方に対応することで、地域の電波環境や用途に応じた通信の選択肢を広げる狙いがあるのだ。

トヨタはこれまで、こうした通信の必要性をクアルコム側と継続的に協議してきたという。それは、自動車メーカーに加え、通信や半導体の企業とも将来像を共有し、普及を支える機器を整える目的があるからだ。

一方でこの実現のためには新車への搭載だけにとどまらず、既存車への後付けも重要になる。ブースではドライブレコーダー一体型車載器の検討や、自転車用ITS車載器の開発も紹介された。対応する交通参加者を増やすことで、安全支援の効果を社会全体へ広げようとしているのだ。

《会田肇》

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