マツダが、バタフライドアを採用できる小型FRスポーツカーを想定したとみられる車体構造の特許を出願していたことがわかった。
【画像】マツダ FRスポーツカー の予想CGとアイコニックSP
公開された図面に描かれているのは、エンジンを車体前方に縦置きし、後輪を駆動する2人乗りオープンカーだ。具体的な車名は記されていないが、そのレイアウトから気になるのが、次期『ロードスター』や、市販化が期待される『アイコニックSP』との関係だ。
◆跳ね上げ式のドアを開発中
今回明らかになったのは、主にドアの取り付け部分と車体骨格に関する2件の特許だ。最大の特徴は、一般的な前ヒンジ横開きドアではなく、後端が外側へ張り出しながら上方へ持ち上がる「フリップアップ・サイドドア」を想定していること。開き方は、スーパーカーなどで採用される「バタフライドア」に近い。
マツダはこれまで、市販車にバタフライドアを採用していない。オートザム『AZ-1』に「ガルウィングドア」を採用した例があるぐらいだ。実用化されれば、マツダとしては異例の装備となる。ただし、今回の出願資料で注目すべきなのは、ドアそのものだけでなく、それを成立させる車体構造だ。
マツダ アイコニックSP コンセプトオープンカーは固定式ルーフを持つクーペに比べ、車体剛性を確保しにくいという課題がある。さらに、上方へ跳ね上げるドアには複雑なヒンジ機構が必要となり、その土台となるAピラーにも高い強度が求められる。
そこでマツダは、ドアを支えるヒンジピラーとフロントサスペンションの取り付け部を近づけ、補強部材で結ぶ構造を考案した。フロントタイヤ上部から車室前方へ複数のフレームを配置し、サスペンションから伝わる力をピラーや車体中央へ分散させることで、重量増を抑えながら剛性を高める狙いがあるとみられる。
◆オープンカー向けの研究
もう1件の資料では、前面衝突時の荷重を車体後方へ効率よく伝える構造も示されている。エンジンルームと車室を隔てる部分やサイドシルへ衝撃を分散させ、乗員空間の変形を抑えることを狙ったものとみられる。
つまり今回の技術は、オープンボディに跳ね上げ式ドアを採用しながら、軽さや剛性、衝突安全性を高いレベルで両立させることを目指したものといえる。
マツダ FRスポーツカー の予想CG
◆既存の車種やコンセプトカーとの関係
さらに注目されるのが、図面に描かれたパワートレインだ。車体前方には直列4気筒とみられるエンジンが縦置きされ、その後方にはトランスミッションとセンタートンネルが配置されている。全体としては、ロードスターを思わせるオーソドックスなFRスポーツカーのレイアウトだ。
いっぽう、2023年のジャパンモビリティショーで世界初公開されたアイコニックSPは、2ローターのロータリーEVシステムを採用したコンパクトスポーツカーとして登場した。ロータリーエンジンは主に発電を担い、モーターで車輪を駆動する構想が示されており、今回の図面とはパワートレインの考え方が異なっている。
ただし、これだけを根拠に「ロータリーが廃止された」「直列4気筒へ変更された」とは判断できない。今回の出願はドアや車体構造が主題であり、エンジンは搭載例として描かれている可能性があるためだ。図面のエンジンが将来の市販車にそのまま採用されるとは限らない。
マツダ ロードスター 現行◆ロードスターの哲学に反する
では、この技術は次期ロードスターを想定したものなのか。ロードスターは歴代モデルを通じ、軽量、コンパクト、手頃な価格という価値を守ってきた。重量やコストが増えやすいバタフライドアは、その基本思想とは相反する面もある。そのため、この構造が次期ロードスターにそのまま採用されることはないだろう。
いっぽう、上方へ開くドアによる特別感を考えれば、ロードスターより上級に位置する新型スポーツカー、あるいは市販版アイコニックSPを想定した技術なのかもしれない。
◆上級モデルが登場か?
マツダは2025年の事業説明で、アイコニックSPをブランド価値を体現する“ブランドアイコン”と位置付けている。将来的な市販化への期待が高まる中、関連する技術開発が並行して進められている可能性もある。また、ロードスターと将来のロータリースポーツとで基本骨格を共有しながら、ロードスターには通常のドア、上級モデルにはバタフライドアを採用するなど、複数車種への展開を見据えた研究開発という見方もできる。
次期ロードスターなのか、市販版アイコニックSPなのか、それとも新たなスポーツカーなのか。現時点で車種を特定できる材料はない。ただ、特許出願は必ずしも市販化を意味するものではない。少なくとも今回の特許からは、マツダが将来のFRスポーツカーを見据えた車体技術を研究していることが見えてくる。マツダは軽量なFRスポーツカーの可能性を追求し、オープンボディでも高い剛性や安全性を実現するための研究を進めているのだ。










