ポルシェ エンジニアリングは、データ主導型開発の推進に向け、全開発サイクルを支えるモジュール型ツール群を発表した。
【画像】ポルシェ エンジニアリングが統合モジュール型ツールでデータ主導車両開発を加速
これらのツールは各プロジェクトの要望に柔軟に対応可能であり、多くの産業顧客はこれらのツールを最大限活用することで大幅な開発期間短縮を実現している。
車両開発の現場においてデータは“新たな金鉱”とも言われ、データ分析に基づく開発手法の重要性が高まっている。同社のADASデータ分析責任者レオン・デイビッド・ランゲ氏は、「データ主導型開発により新機能の最適化と市場投入の迅速化が可能となり、特に複雑な車両機能の合理的な実現が進んでいる」と述べている。
緊密なフィードバックループを実現するには、開発からテスト、解析まで途切れないツールチェーンが不可欠だ。シニアソフトウェアエンジニアのハーゲン・シュテュービング博士は、「同社が複数の専門分野の協力で開発した統合モジュール型ツールが、単独でも一連の流れでも最適なプロセス改善を提供する」と説明。車両内でのデータ取得からクラウドでの分析、新ソフトウェアの車両への適用までをカバーしている。
これらツールはモジュール構造のため、顧客のニーズに沿って必要な部分のみ選択可能だ。データ取得は初期開発から耐久試験、量産に至るまで一貫した対応が可能で、市場変化への迅速な対応に寄与する。
現在のポルシェ エンジニアリングのラインナップは6つのツールで構成される。
AMDA V2(自動測定データ評価ツール)は車両内でリアルタイムに走行データを解析し、関連信号を自動評価。PEDG(ポルシェ エンジニアリング データギャザー)は量産車に組み込まれ、OTAによる遠隔設定で特定シーンを自動検出・記録し、バックエンドへ送信する。ComBoxアプリは標準Androidスマートフォン上でのデータ提供および走行テストの検証を支援。SALLYは車両開発に特化したクラウド上のLLMサービスプラットフォームで、開発者の補助を担うデジタルアシスタントだ。PEvIoT(PE IoTエッジプラットフォーム)は車載PCに統合され、5G経由で測定機器を管理しデータをクラウドへ送信する。PEDH(ポルシェ エンジニアリング データハブ)は収集データのクラウド上データレイクとなる。
これらは数十年にわたるポルシェの車両開発経験を活かして社内開発されたものであり、ライセンス提供により業界顧客も利用可能だ。単体利用だけでなく全ツールの包括的利用が特に大きな効果をもたらす。
AMDA V2はデータバスに直接アクセスし走行中のシナリオをリアルタイム判定。例として車両前方の割り込みを検知し、適応クルーズコントロールの対応を評価する。解析をテスト車両内で完結させることにより、大量データのクラウド送信不要でコストと効率を改善する。
PEDGは量産用制御ユニットに組み込み可能で物理的な車両アクセスなしに遠隔操作で特定プロセスを自動記録。数百台規模の量産車隊から継続的にデータ収集できる。
SALLYは他の大型言語モデルとは異なり、車両開発ドメインの知識にアクセスでき開発現場に特化したサポートを実現するデジタルアシスタントプラットフォームだ。







