強み強化とM&Aで選択と集中が進む欧州サプライヤー…人とくるまのテクノロジー展2025

ヴァレオ:SDV関連製品(人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA)
  • ヴァレオ:SDV関連製品(人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA)
  • ヴァレオ:SDVエコシステム
  • ヴァレオ:MCCU
  • ヴァレオ:クラウドサーバーにインストールされるECUユニット
  • ヴァレオ:2メガピクセルインテリジェントヘッドライトシステム
  • ヴァレオ:デジタルコックピットの提案:ダッシュボード上部に投影式ディスプレイを展開
  • ヴァレオ:次世代コックピットの開発環境画面
  • ヴァレオブース(人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA)

工業製品の地産地消や電動化シフトが進む中、サプライヤー業界はさまざまな規模の企業の離合集散が繰り返されてきた。得意分野の強化、事業部の統廃合、合併や買収による企業統合も広がった。

その結果、各社の事業ドメインや戦略にも変化が現れている。いい意味での選択と集中(本来選択と集中は積極的な経営戦略だったが現在、不幸にもこの言葉はリストラ局面でしか目にすることがないのであえて「いい意味で」とした)が進み、新しい各社の個性や戦略が生まれている。

「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」では、その違いを展示や製品によって垣間見ることができる。ここではヴァレオ、シェフラー、ボッシュの3社について展示内容と戦略を紹介する。


自社製品をクラウド開発エコシステムで補強するヴァレオ

ヴァレオは、SDV(Software Defined Vehicle)をコアビジネスにとらえ関連のソリューションを展開。eアクスルや電動ブレーキ、ステアリング技術を始め、ADAS向けECU製品群、デジタルコックピット、高機能ライティング技術に注力している。これらのハードウェアコンポーネントや製品展示は多いが、SDVに不可欠なソフトウェアプラットフォームやツールの展示も大きなスペースを割いていた。

ヴァレオのSDV戦略は、車両開発・製造に必要なSDVエコシステムやインフラを構築すること。ビークルOSについては、vOSと呼ばれるミドルウェアのフレームワークを用意し、OEMごとのOSに対応する。この開発エコシステムのリソースは、原則としてクラウド上に構築され、OEMやパートナーはAWS上に構築されたヴァレオのSDV開発環境を利用する。この開発環境は、シミュレーションによるバーチャル空間やECU・車両を再現するものだ。

クラウドベースなので、1台の車両開発を世界中の拠点から同時に行うことができる。同社では「HIL as a Service」と呼ぶアプローチで、バーチャルターゲット車両のオンデマンドテストも可能としている。HIL as a Serviceは、ハードウェアループをクラウド開発プラットフォームに組み込んだものだ。ヴァレオのSDVエコシステムでは、クラウドの実体であるデータセンター内の専用ラックに、ターゲットシステムのECUと同等のECUユニットを装着できるようになっているのが特徴だ。

パブリッククラウドサービスには、「ベアメタル」というリアルなサーバーハードウェアを割り当ててもらえるメニューがある。クラウド環境では、サーバーインスタンスは仮想化されたものので、物理サーバーの構成や仕様は指定できない。ベアメタルサービスは、物理サーバー1台を占有できる。この物理サーバーをヴァレオのECUユニットにすることで、HIL as a Serviceを成立させている。

クラウドサーバーにインストールされるECUユニット

AWSでもクラウド上のAppleコンピュータ本体をラック型サーバーの代わりに設置するサービスがある(MacOSのインスタンスを仮想環境で提供するより本体を設置してそのままホスティングサービスとして提供するイメージ)。

最終的な実機テスト、実車テストは必要だが、エッジケーステストなど実環境で難しいテストのシミュレーションなど、開発の大部分をクラウド作業に集約し、開発をスピードアップすることができる。

また、ドメインコントローラーやゾーンコントローラーのアーキテクチャに対応するECUユニットは、モジュール式になっておりマザーユニット上でカートリッジ式に交換や増設が可能になっている(モジュラー型セントラルコンピュータユニット:MCCU)。SDVではOTAによる機能アップデートが必須となる。このときECU自体の処理能力や機能拡張をしたい場合もある。L3/L4自動運転の新機能に、より高速な演算性能かつ省電力性能が求められる場合、スロット式の「弁当箱」最新のユニットに差し替えるだけという運用が可能になる。

ヴァレオのMCCU

以上の技術は、2025年のCESでも発表されたものだが、人とくるまのテクノロジー展では、例えばAIによる対話型のIVI開発環境(クラウドIDE)、HIL as a Service、MCCUなどとともにSDVエコシステムの全体像が示された。

ヴァレオのSDVエコシステムは、ビークルOSレイヤ、アプリケーションレイヤよりも、クラウドインフラや開発環境(ミドルウェアの一部)をお膳立てすることで、OEMやパートナーのニーズに適合させやすくしている。そもそも、ヴァレオのSDVエコシステムは自社でSDVコンポーネントや車両の開発を行うためのシステムとして設計されたものだという。これを、共通プラットフォームとして提供する。AWSもアマゾンが自社の開発システムをサービスとして公開して広がったものだ。

eアクスル・水素・産業機器と電動化シフトとポートフォリオ拡大を目指すシェフラー

シェフラーは事業ドメインのシフトとポートフォリオの拡大で変革に対応しているサプライヤーだ。同社は従来からのパワートレイン&シャシー事業部を始め、Eモビリティ事業部、経営統合したヴィテスコによるベアリング&産業ソリューション事業部、アフターマーケットを対象としたビークルライフタイムソリューション事業部の4つを中核としたビジネスを展開している。

今回の展示では、eアクスルおよびその周辺技術、プロダクツが目立つ。プレスカンファレンスでは、日本市場では初めて導入する7種の技術・製品を紹介した。

シェフラーが日本に導入する7製品

《中尾真二》

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