CASEから始まった自動車革命も10年が経とうとしている。変革は現在進行形で進んでおり、議論はAIや自動運転、SDVといったソフトウェアサービスの領域に広がっている。その一方でEVかICE(HV)かという議論もいまだに続いている。
だが、自動車産業の将来を考えるとき、どれかを正解とする銀の弾丸を追っても意味はない。混沌とした状態を整理するには、おそらく業界以外の視点が必要だ。CASE・SDVといったとき、関係する業界は多岐にわたるが、今、自動車に関わるあらゆる産業の根底にあるのがエネルギー変化といえる。
そこで、茨城大学 カーボンリサイクルエネルギー研究センターの古關惠一教授に、エネルギー業界から見た、現状の問題や自動車業界の動きを分析してもらった。インタビュアーはKPMGコンサルティング プリンシパル轟木光氏だ。セミナーの前に話を聞いた。
「自動車を取り巻く世界のエネルギー最新動向と将来展望~これからどのような戦略が必要なのか~」
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エネルギーは当たり前に使えるもの?
轟木光氏(以下敬称略):さっそくですが、自動車業界では、電気自動車や内燃機関、ハイブリッド車だというような議論がずっと続いています。しかしその議論は、そもそもエネルギーは当然に与えられるものという前提に立っており、本質を見失っている懸念があります。
古關惠一氏(以下敬称略):全く同感です。エネルギーは水と空気と似ているところがあって、どれも普段は意識せず潤沢に使えるもの、問題なく得られるものであることが重要です。調達の不安もなく安全で公害ももたらさない。エネルギーがそういうものなら、国民は細かいことを知る必要はないと思っています。しかし、実際、今はそうではない。
轟木:自動車もエネルギーがなければただの鉄の塊です。
古關:そうですね。確かにエネルギーがなければ車は動きません。しかし、私は自動車は(文字通りの)鉄の塊とは思ってなくて、例えば石油化学の側からすれば、車はマシュマロみたいなものでもよいと思ってるし、そこまでいかなくともカーボン繊維でもプラスチックでも問題ないと思っています。現実に、ボディや素材の樹脂化による軽量化は進んでいます。軽量化やメンテナンスなどニーズがあったので、石油化学業界、化学屋の発想で協力していきました。鉄というバンダリーには必ずしもこだわっていなかった印象ですね。
轟木:なるほど。分野が違えば、車の捉え方も千差万別ですね。水と空気を使えることは当然と言われていますが、現代はそれさえ怪しくなっています。エネルギーが当然のように使える状況、それを作り出していることの本当の難しさを認識すべきかと思います。この点、古關先生はどうお考えですか。