<新連載>「カーオーディオ・素朴な疑問」スピーカー交換には“取付費用”が多めにかかるのはなぜ?

「インナーバッフル」を用いて取り付けられたスピーカー。
  • 「インナーバッフル」を用いて取り付けられたスピーカー。
  • 「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。
  • 「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。

愛車のサウンドシステムのアップグレードに興味を抱きつつも、なんとなくの「分かりづらさ」を感じているドライバーは少なくないようだ。そんなさまざまな「?」の答を、当連載では1つ1つ1つ解説している。現在は、「スピーカー」に関連した事柄にスポットを当てている。

◆カースピーカーは、売られている状態ではまだ“半完成品”!?

さて、スピーカー交換」には「取付費用」が多くかかりそうだと思われがちだ。取付作業や交換作業が必要なカー用品は多々あるが、それらと比べて「スピーカー交換」では確かに、製品代以外にある程度まとまった額の費用がかかる。

それには理由がある。それは、「カー用のスピーカーは“ただ付けば良い”というものではないからだ。加工がなんらか必要になり、そのときには部材が使われてその作業には技術を要する。それらが製品代以外のコストとなるのだ。

というのもカー用のスピーカーは、スピーカーユニットが裸の状態で売られている。対してホーム用のスピーカーは、スピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で完成品となっている。そしてその箱も当然ながら、スピーカーの一部だ。箱なくしてはスピーカーとしては成り立たない。

で、カースピーカーはドアがスピーカーボックスの役目を果たす。だがクルマのドアは、スピーカーボックスとしては作られていない。なのでスピーカーを取り付けるという作業はすなわち、「スピーカーボックスを作る」という工程も伴うこととなる。ゆえに一般的なカー用品の取付工賃よりも、金額が高めにならざるを得ないのだ。

「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。

◆ドアスピーカーの取り付けには「インナーバッフル」の使用がマスト!

その「スピーカーボックスを作る」という工程が、どのようなものなのかを説明していこう。まずは、スピーカーユニットを固定するための土台となるパーツが必要となる。そのパーツのことは「インナーバッフル」と呼ばれている。

これが必要となる理由は主には4つある。まず1つ目は、「足場を安定させたいから」だ。スピーカーは磁気回路で発生した力で振動板を動かして空気を震わせて音を伝える。しかし、スピーカーの足場が軟弱だと踏ん張りが効かずにパワーをロスする。そうなると音質も落ちていく。

理由の2つ目は、「ネジ穴の位置が合わない場合が多いから」だ。純正スピーカーの固定方法は車体メーカーごとでさまざまだ。そしてスピーカーのフレームに開いているネジ穴の位置も製品ごとで異なる。なので元々開いているネジ穴の位置がピタリと合うことはごくまれだ。しかし「インナーバッフル」を用いれば、「インナーバッフル」の表面のどこででもネジを受けられる。

なお「インナーバッフル」はワンオフされることが多い。そうすることで取り付ける車種と使用するスピーカーに対してジャストなものを用意できるからだ。

「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。「市販インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。

◆窓ガラスとの干渉を避けるには、スピーカーを立ち上げる必要がある!

ただしワンオフするとその分コストはかさんでしまう。なので「取付費用」を抑えたいと思ったら、市販品を使うという手もある。その手を使えば総費用の縮小が可能となる。

そして「インナーバッフル」が必要となる3つ目の理由は、「スピーカーを立ち上げる必要があるから」だ。市販スピーカーは純正スピーカーと比べると厚みがある。高性能なスピーカーを作ろうとすると、ある程度筐体が大型化するからだ。

それをドアの鉄板に直付けすると、スピーカーの奥側がドアの中に降りてくるウインドウと干渉してしまう。しかし「インナーバッフル」を用いればスピーカーの奥側が車室内側へと起き上がり、ガラスとの干渉を避けられる。

さらに理由の4つ目は、「鉄板の共振を抑制したいから」だ。とにもかくにもクルマのドアの鉄板は厚みが少ない。ゆえに、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーで簡単に共振してしまう。でも頑丈な「インナーバッフル」を用いれば、それを抑制する効果も発揮してくれるのだ。

今回は以上だ。次回も「スピーカーを作る」作業にはどんな工程が必要となるのかについて説明する。お楽しみに。

《太田祥三》

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