物流のイノベーションを加速させることの重要性…2024年は物流危機の「始まり」に過ぎない

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  • 不足する輸送能力の割合
  • 自動運転トラックの社会実装に向けたロードマップ案
  • 施策の効果(2024年度分)

「2024年問題」まで残り3ヶ月強となった。様々なメディアで大々的に報じられたこともあり、「2024年4月から時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されること」「運賃の上昇のみならず、今まで運べていたものが届かなくなる可能性もあること」などは広く知られつつある。徐々にとはいえ、具体的な対策を検討・実行しようとする企業も増えた。健全な危機意識の醸成が進んだといってよいだろう。

しかしながら、その取り組みの多くは「2024年問題対策」でしかない。物流の持続性を抜本的に高める施策を講じなければ、2024年問題は乗り切れても早晩破綻する。なぜなら、2024年は物流危機の「始まり」に過ぎないからである。

NX総合研究所の試算によれば、このまま何も対策を実行せずに2024年問題が発生すると約14%の輸送能力が不足する。今まで100の荷物を運べていたとすれば、それが86になるということだ。

そうならないために様々な対策が実行されつつあるわけだが、輸送能力は2025年以降も低下し続ける。少子高齢化によりトラックドライバーが減少するからである。上述のNX総合研究所の試算によると、2030年時点での輸送能力の不足は約34%となる。7年後には実に3分の1の荷物が届かなくなるのである。

不足する輸送能力の割合

政府の有識者会議である「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は、本年8月に発表した「最終取りまとめ」において「2024年で対策が終わりということではなく始まりである」と記した。2024年問題対策に加えて、その後のさらなる人手不足を見据えた施策を中長期的に実行していく必要があるといえよう。

2030年を過ぎたあたりでピークを迎える可能性

今後も少子高齢化が進むことを考えると、輸送能力は2030年以降も低下し続けると見るべきだろうか。その可能性を完全に否定することはできないが、2030年を過ぎたあたりでピークを迎えることも多分に予想される。なぜなら、自動運転トラックをはじめとする先端技術の実用化が見込まれるからだ。


《小野塚 征志》

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。 ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。 内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、日本プロジェクト産業協議会「国土創生プロジェクト委員会」委員、ソフトバンク「5Gコンソーシアム」アドバイザーなどを歴任。 近著に、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル-80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。

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