フルオーダーで理想のレーシングスーツを!…体験レポート前編:採寸から仮縫いまで

フルオーダーで理想のレーシングスーツを!…体験レポート前編:採寸から仮縫いまで
  • フルオーダーで理想のレーシングスーツを!…体験レポート前編:採寸から仮縫いまで
  • 住宅地の中にあるアチーブ(埼玉県草加市谷塚上町738-1)。ヨネゾーブランドのレーシングスーツはここで作られている。
  • ヨネゾーはフルオーダーのブランドだ。ライダーごとに採寸、デザインを作り込んで自分だけの一着を作れるのが魅力だ。
  • 身体の採寸はかなり綿密。各部の長さ、太さなど合計22カ所のサイズを計測する。
  • レーシングスーツがピタリと身体にフィットするためにはこの採寸が大切になる。
  • 採寸したデータを元に作られるのがこの仮縫いと呼ばれるもの。
  • 仮縫いは薄手の生地をレーシングスーツと同じ構造で作ってある。
  • 仮縫いを着ることで採寸だけではわかり難かった細部の微調整を行う。

ロードバイクに乗るライダーにとって憧れなのがレーシングスーツ、いわゆる革ツナギだろう。そんなレーシングスーツで現在、注目なのがフルオーダーだ。既製品とは一体何が違うのか? 実際にオーダーから製作、着用しての走行までを筆者自身が体験取材した。

レーシングスーツのフルオーダーとはいったいどんなものなのか? そんな疑問を持つ読者も多いだろう。または、知ってはいるけどどんなプロセスを経て完成するのか、どのようなオーダーができるのかまでは知らない場合がほとんどではないだろうか? そこでライター自身がフルオーダーでレージングスーツを作る過程を実際に体験し、オーダーレーシングスーツの完成までをリポートしてみることにした。

住宅地の中にあるアチーブ(埼玉県草加市谷塚上町738-1)。ヨネゾーブランドのレーシングスーツはここで作られている。住宅地の中にあるアチーブ(埼玉県草加市谷塚上町738-1)。ヨネゾーブランドのレーシングスーツはここで作られている。

今回、フルオーダーしたのはYONEZO(ヨネゾー)と呼ばれるレーシングスーツのブランドだ。いわゆる大手のレーシングスーツブランドではないものの、関東圏のサーキットでは知らぬものがいないほどの知名度を誇り、世界や全日本を舞台に走る超一流ライダーも、かつてヨネゾーのレーシングスーツを着ていたケースも実は多いのだ。ヨネゾーを着用していたライダーを見ると誰もが知る超一流ライダーがゴロゴロしていることがわかる。そこからもサーキットを走る一流ライダーに信頼されてきたブランドなのがわかるだろう。

アチーブの作業場。ここから数多くのレーシングスーツが作り出されている。アチーブの作業場。ここから数多くのレーシングスーツが作り出されている。

埼玉県草加市にあるヨネゾー(有限会社アチーブ)は1985年に同ブランドを立ち上げた老舗。ブランドスタート当時のレーシングスーツにはまだ輸入品が多く、既製品では体型に合わないという声も多かった。そこでヨネゾーではいち早くフルオーダーを手がけ、あらゆる体型のライダーにピタリとフィットするレーシングスーツを提供することにする。サーキットで走るスポーツライディングではフィット感や動きやすさはとにかく大切。さらにツーリングで使用してもそのフィット感は快適性や疲れにくさにつながる。フルオーダーすることでライダーの身体にピタリとフィットするレーシングスーツを作ることを現在にいたるまでずっとテーマにし続けているブランドがヨネゾーなのだ。

あらためてレーシングスーツのフルオーダーとはどのようなものだろう? まずは皆さんがバイク用品店などで目にするレーシングスーツは既製品だ(“ツルシ”などと呼ばれる)。身長や体重などに合わせていくつかのサイズを用意していて、比較的自分の体型に合うサイズを選んで購入するというスタイルだ。さらにレザースーツメーカーの中には既製品をベースにして部分的にサイズを変更するセミオーダーを実施している場合もある。

既製品は当然ながら標準的な体型に合わせて作られていることが多く、誰にでもピタリとフィットするわけではない。それを部分的に補うのがセミオーダーだ。さらにフルオーダーのレーシングスーツはその名の通り自分の体型に合わせて作るのが特徴。文字通りにゼロから作るオーダーメイド品なのだ。もちろんその特徴はフィット感。ピタリと身体に合うレーシングスーツは動きやすく、ライディングしやすくなるのだ。

ヨネゾーはフルオーダーのブランドだ。ライダーごとに採寸、デザインを作り込んで自分だけの一着を作れるのが魅力だ。ヨネゾーはフルオーダーのブランドだ。ライダーごとに採寸、デザインを作り込んで自分だけの一着を作れるのが魅力だ。

実際に筆者も既製品のレーシングスーツを国産、輸入品とこれまで2着経験してきたが、特に輸入品のリーズナブルなモデルはサイズ設定も少なかったためフィット感はイマイチ。腰回りや太もも回りなどにムダがあり少し余裕のある着心地だった。

筆者はサーキットでサンデーレースを楽しむためにレザースーツを使っているのだが、サーキットの先輩達からはたびたび「フルオーダーのレザースーツを着ると○秒タイムが上がる」と聞かされていた。しかし既製品に比べると高価なこともありなかなかフルオーダーには手が出なかったのも事実だ。サーキットを走るライダーにとって「金で買えるタイムは買っておけ」というのもよく聞く格言、それだけにずっと気になっていた存在だったのだ。

そして満を持してヨネゾーに向かったのは昨年の秋。バイク仲間にはヨネゾーのレーシングスーツを使っているユーザーが数多くいたので、着心地の良さや動き易さ、さらには価格面でのメリットなども聞いていた。筆者が主に走っている筑波サーキットでもYONEZOのロゴを付けたレーシングスーツを着ているライダーも多い。しかもフルオーダーを長年手がける老舗ブランであることなども含めて選んだのがヨネゾーだったのだ。

身体の採寸はかなり綿密。各部の長さ、太さなど合計22カ所のサイズを計測する。身体の採寸はかなり綿密。各部の長さ、太さなど合計22カ所のサイズを計測する。

ここからは実際にヨネゾーのレーシングスーツをフルオーダーした際の体験をリポートして行くことにする。ヨネゾーブランドを擁するアチーブは住宅街の中にあり、知る人ぞ知るという風情。予約をして1回目の打ち合わせに向かうと、気さくな社長が対応してくれてレーシングスーツをどんな用途で使うかといった話などの雑談から緩やかに打ち合わせがスタートした。

そんな雑談の中からガチのレーシング利用なのかツーリング兼用なのかなどをリサーチして、レーシングスーツ作りに反映させていたことは後から知ったことだった。近年はツーリングからサーキット走行会までの用途を考えているユーザーが3割程度、サーキット走行メインのユーザーが7割程度だという。用途やバイクの車種などもそれとなく話しに出てきて、それをベースにレーシングスーツのタイト感なども細かく調整しているというのだ。

レーシングスーツがピタリと身体にフィットするためにはこの採寸が大切になる。レーシングスーツがピタリと身体にフィットするためにはこの採寸が大切になる。

次の過程は身体の採寸だ。メジャーで身体の各部を実際に測定していくのだが、かなり細かな部分までを採寸することになる。身長などのザックリしたスペックではなく、首回り、肩幅、太もものまわり、ヒザ下、手首回りなど、全身の細部をくまなく計っていく。具体的には採寸は22カ所に及び、この測定値をベースにして身体に合わせたレーシングスーツを作っていくことになるのだ。

ここで初日の打ち合わせは終了。この日に採寸したデータを元に「仮縫い」と呼ばれるレーシングスーツと同じ形状を薄い生地で作る段階に入る。この仮縫いができるまでの期間にもうひとつのポイントとなるデザインをプランすることになる。デザインについては後編で詳しくお伝えするが、デザインは基本パターンもありヨネゾーからもアドバイスがあるので“デザイン決めをどうしたら良いのかわからない”という場合でも安心して良いだろう。

採寸したデータを元に作られるのがこの仮縫いと呼ばれるもの。採寸したデータを元に作られるのがこの仮縫いと呼ばれるもの。

初日の採寸からある程度の期間をおいて「仮縫いができ上がった」という連絡が来た。再び同社の向かうと、でき上がっていた「仮縫い」はレザースーツと同じ立体裁断をパーツ分けした薄手の生地で作られたものだった。先日の打ち合わせ時に採寸したサイズで仮縫いは製作されているのだが、実際に着てみることで採寸ではわかりにくかった部分の微調整を行うのだ。身体の各部のフィット感を見つつ、細かく微調整のメモを取っていくスタッフ。いきなりレザーを使ってレーシングスーツを作ってしまうのではなく、いったん仮のスーツを作って各部を確認するのもフルオーダーらしい入念な作業と言えるだろう。仮縫いによる微調整が終わるといよいよレザーを使ったフルオーダースーツの製作に取りかかることになる。

仮縫いを着ることで採寸だけではわかり難かった細部の微調整を行う。仮縫いを着ることで採寸だけではわかり難かった細部の微調整を行う。

後編ではレーシングスーツのデザイン決めなどについてさらに詳しく紹介していくことにする。フルオーダーならではの自分だけの一着を作る過程については後編をチェックして欲しい。

《土田康弘》

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