2022年7月から販売される新型車に搭載が義務化されたイベント・データ・レコーダー(以下、EDR)。これを活用することにより、(1)事故原因の解明、(2)適正な修理費の算出ができるようになっていく。
損保会社の顧問弁護士を長く務めてきた、もみのき・友近法律事務所の弁護士で、名古屋大学未来社会創造機構モビリティ社会研究所の特任准教授でもある友近直寛氏の解説、後編である。(前編「池袋暴走事故で「踏み間違い」証拠に、義務化された「EDR」どう活用する」)
◆「モラルリスク事案」に活用されるEDR
交通事故時に、EDRを分析して活用するのは、どういうケースなんですか?
友近弁護士(以下、友)「池袋の事故のように、被害者が死亡するなどした刑事裁判(加害者の罰則を決める)や、民事裁判(損害賠償額を決める)の場合は、多重衝突や、相手が亡くなったり重症で証言がまったくとれない場合。あと、モラルリスク事案です」
モラルリスク事案とは?
友「嘘をついて、保険金をだまし取ろうというものです。保険会社が契約者の証言を覆すための証拠として使います。クルマがスリップしてガードレールにぶつかったと言っているのに、EDRには、ハンドルを急にガードレールの方に向けたり、ぶつかる直前にアクセルをべったり床まで踏んで、その後、ちょっとブレーキを踏んだといった不自然なドライバーの挙動が記録されていることがあります」
明らかに不自然な動きですね。
友「はい。ばればれですよね。ただ、EDRのデータだけで判断するのではなく、あくまでも補完的に使い、我々としてはこれまで行ってきたHC&E(Human Car & Environment。人の証言やケガ、クルマの損傷具合、現場の状況)と組み合わせて事故を再現するほか、そのほかの証拠も集めていきます」
その他の証拠とは?
友「たとえば、事故の直前に車両保険に入ったとか、生活状況が困窮しているとか」
それは、怪しいですね。ただ、直前に車両保険に入ったことは契約している保険会社ですぐにわかりますが、生活が困窮しているのはどうやって調べるんですか?
友「保険料を引き落とす銀行口座の残高証明をとります。引き落とし銀行なのに、残高が1000円くらいしかないというのは、あれ、おかしいぞとなりますよね。あとは、所有している不動産などに抵当権(借金のカタ)がついているとか」
なんだか、探偵みたいです。ほかにはどんなことを?
友「あとは……企業秘密なので内緒です」
◆自動運転時代にこそデータを残す意味は大きい
では、どういう事故が、「この人は怪しい。調べてみるか」となるのでしょうか。
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