長野県3市、地域ごとの新しいモビリティサービス【MaaSがもたらす都市変革】

三輪カート「egg」(小諸市)
  • 三輪カート「egg」(小諸市)
  • 小諸駅と「こもこむ号」
  • 「信州こもろ・こま~す」アプリ
  • AI活用型オンデマンド交通「のるーと塩尻」
  • ドローンを使った支え合い買物サービス「ゆうあいマーケット」(伊那市)

日本の都道府県では4番目の面積を持つ長野県は、北信・中信・東信・南信の4つの地方に分けて語られることが多い。人口で見ると、北信地方にある県庁所在地の長野市が人口約37万人、中心地方の中心都市と言える松本市が約24万人で、この2つが突出しているものの、それ以外にも上田市や佐久市、飯田市など、10万人クラスの都市が県内に点在している。

つまり一極集中ではなく、諏訪市を中心とする精密機械産業のように、都市圏ごとに独自の発展をしている印象が強い。交通政策についても同様で、全県を網羅する鉄道・バス事業者が存在しないこともあり、地域ごとの対策が主体となっている。当然ながら自治体によって積極性の違いはある。その中からここでは、東信地方の小諸市、中信地方の塩尻市、南信地方の伊那市の取り組みを紹介したい。

LINE公式アカウントを活用…小諸市

最初に取り上げる小諸市は、東信地方では上田市、佐久市に次ぐ第3の都市で、人口は約4.2万人となる。戦国時代に整備されたと言われる小諸城の城下町、および北国街道の宿場町として栄え、明治時代になると北国街道が国道18号線となったのに続き、信越本線が開通。その後小海線も乗り入れ、交通の要衝として発展した。しかし北陸新幹線の誘致活動で南隣の佐久市に敗れ、信越本線が第三セクターしなの鉄道となり、東京と直結する特急列車がなくなったことなどが影響し、佐久市とは対照的に人口減少が進み、路線バスの廃止が進んだりした。

一方2016年からは朝夕定時定路線、日中オンデマンドとする市営バスを導入した。しかしながら定時定路線バスは利用者が少ないのに対し、オンデマンドバスは特定の時間に予約が集中するなど、課題を残していた。こうした中で西隣の東御市では、長野市に本社を置き、ガレージ・物置、農業改革、太陽光発電など幅広い分野を手掛ける企業カクイチが、地方創生という考えからMaaS事業に参入。2020年度に市内巡回電動バスの実証実験を始めていた。ちなみに筆者は同社のMaaS事業アドバイザーを務めており、これから紹介する小諸市を含めて、各種実験に間接的に関わっている。

小諸市はこの動きに注目、2021年度からカクイチとともに社会実験を始めた。三輪と四輪の電動カート「egg」を中心市街地で周回させ、電動バス「こもこむ号」を使った市内巡回路線も運行。電動カート/バスのロケーションシステムやQRコードによる乗車チケット、協賛店舗一覧情報などを提供するMaaSも展開している。


《森口将之》

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