【ルノー ルーテシア E-TECH 新型試乗】これなら積極的にハイブリッドを選びたくなる…中村孝仁

電子制御ドッグクラッチマルチモードATの利点

こんなクルマが欲しかった!と叫びたくなる楽しさ

これなら積極的にハイブリッドを選びたくなる

ルノー ルーテシア E-TECH
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電子制御ドッグクラッチマルチモードAT。うーむ、要はドッグクラッチを持ったトランスミッション。つまりドッグミッションのことだ。

自分が知る限りいわゆるモータリゼーション勃興以後、日本で最初に自動車にドッグミッションを使ったのはホンダ『Z360GS』だったと思う。ノンシンクロだから入れるのに苦労した覚えがあるが、慣れてしまえばクラッチも使わずにスパッスパッとギアが入った。と、これはマニュアルの話だが新しいルノー『ルーテシアE-TECH』の場合はATである。

つまりどういうことかというと、ドッグミッションはシンクロ機構がないから、ギアを入れるときにエンジン回転が合っていないと入りづらい。その回転をアジャストしたのがマニュアルの場合はシンクロメッシュという機構だったが、そいつを現代版はモーターでやってしまおうというのが、そもそもこの電子制御ドッグクラッチマルチモードATの仕組みである。

電子制御ドッグクラッチマルチモードATの利点

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フルハイブリッドのモデルはなんと輸入車ではルノーだけ。つまりちょっと前に出た『アルカナ』と、このルーテシアだけが輸入車フルハイブリッドなのである。ハイブリッドにトランスミッションを介在させた理由はそのレスポンスの良さで、これまでのハイブリッド車にはなかったドライビングプレジャーを与えられるからというのがルノー側の説明。そしてその楽しさはアルカナでたっぷりと味わった。実に楽しいクルマだった。

ギアはモーター側に2速、そして機械的なトランスミッションとして4速が採用されている。チョイと難しいのだが、片方の動力を切ってしまうゼロを加えると、モーター3速、トランスミッション側5速となり、これらをかけ合わせると理論上は15速。でもゼロとゼロは動かないし、残った14速のうち2速はギア比が一緒ということで、それを差し引くと12速。つまりギア比だけを数えれば何と12速ATということになる。

もっともこれをドライバーが任意に選択できるわけではなく、すべてはクルマの方が勝手に制御する。だから、ごくありきたりのPRNDBと書かれたシフトレバーは勿論マニュアル機構を持たず、当然ながらパドルもない。

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こんなクルマが欲しかった!と叫びたくなる楽しさ

それにしても構造図を見ると見事なほどコンパクトに収まっている。必要に応じた役割分担としては発進がモーターのみ。その後中速域をエンジンとモーターでこなし、高速域は基本エンジン。瞬発力が欲しい時は少しモーターがアシストするといった具合のようであるが、とにかく燃費が良い。WLTC総合モードで25.2km/リットルだという。アルカナがわずかに悪い22.8km/リットルだそうだが、アルカナと比べてルーテシアは160kgも軽いから、燃費の差はそこにあるといっても良い。もっとも性能的にもギア比的にもアルカナの構成とルーテシアの構成は異なっていて、僅かながらルーテシアの方がパワーを抑えてある。と言ってもシステム出力でたったの3ps。

というわけだから、当然ながらアルカナに比べるとキビキビ感ではルーテシアが圧倒する。アルカナもサイズを考えれば十分キビキビ感を持ったクルマだと感じていたが、ルーテシアに乗ってしまうともういけない。こんなクルマが欲しかった!とつい叫びたくなるほど楽しい。恐らく2019年に最後の50台を販売した『ルーテシアRS』を持ち出すまでもなく、このクルマの潜在的な運動性能は高く、システム出力140psあれば十分にドライビングプレジャーを堪能できる。

それに例の12速AT、難しいことは抜きにしてまさに適材的所でギアをセレクトしているのか。今回は東京からアクアラインを渡って千葉まで行き、そこで少し走って再び東京へというルート。だから、多くは高速だったが少しモタっとしたのはパーシャルからフル加速をした時だけ。あとはいつどのギアが使われているかなど全く分からずにただ走っていたが、このパーシャルからフル加速以外にタイムラグを感じたり、心許ない加速をしたりは一切無しであった。

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これなら積極的にハイブリッドを選びたくなる

もとより、素晴らしいハンドリングは少し鋭敏でドライバーに脇見運転を許さないが、ついついコーナーはいつもの2倍増しとは言わないが、相当なスピードで駆け抜けたくなる。どこぞのフレーズじゃないが、まさに「駆け抜ける歓び」である。

足もいい。3サイズたったの全長4075×全幅1725×全高1470mmながら、とにかく大入力の“いなし”がうまく、こちらが大きく揺れると身構えても、呆気にとられるほど当たり前の普通の揺れで通過する。ハーシュも小さいし揺れの収束もビシッと一発!思わず乗りながら「これだよなァ…」と独り言である。

とりわけハイブリッドが好きなわけではないが、これなら積極的にハイブリッドを選びたくなる。因みにガソリン仕様の「インテンス」と呼ばれるグレードと比べてハイブリッドは110kg重い。どうもこの重さが抜群の乗り心地を提供している気がする。しかもガソリンに比べて燃費も50%向上している。それでいて値段はガソリンのインテンスの2割アップにとどめているから、もう完全にお買い得車である。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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