JR東海は6月16日、新幹線の架線電圧を車両側で維持する機能を開発したと発表した。
新幹線の架線電圧は1964年に東海道新幹線が開業して以来、一貫して交流2万5000Vとなっているが、2020年3月のダイヤ改正から実施している『のぞみ』の1時間12本ダイヤのように列車の運行密度が高まってくると、電圧や電流の波形を示す「位相」と呼ばれるものが次第に遅れる「遅れ位相差」が大きくなり、電圧の低下を招くことがある。
このような場合、従来は「電力補償装置」と呼ばれる電圧低下を抑制する装置が使われており、東海道新幹線では沿線に21台設置されているが、今回開発された機能ではN700Sに搭載されている主変換装置のソフトウェアを改良することで車両側に遅れ位相差を縮小する機能を搭載し、架線電圧の低下を抑制するとしている。
電力補償装置による電圧低下抑制の仕組み。JR東海ではこの機能を世界初としており、今後、N700Sの一部に搭載し、2023年2月まで機能確認試験を行なう。導入後は年間にして電気使用量を約2000万kWh、電気料金を約3億円、二酸化炭素(CO2)排出量を約1万トン削減できるとしており、地上設備についても、変電所の約1割、電力補償装置の約半数を削減できるとしている。
東海道新幹線の沿線に21台が設置されている電力補償装置。