【フォーミュラE】 伝統的モータースポーツとは違った魅力のEVレース…第4戦レビュー

【フォーミュラE】 伝統的モータースポーツとは違った魅力のEVレース…第4戦レビュー
  • 【フォーミュラE】 伝統的モータースポーツとは違った魅力のEVレース…第4戦レビュー
  • ニッサンほか、自動車メーカーも積極的に参戦している
  • FEは開催国の首都など、大都市の「ストリートコース」で開催される
  • FEで勝つためには、減速時の回生も合わせた「電費」節約のテクニックが重要
  • 後方から戦略的に追い上げたエバンスが優勝
  • 【フォーミュラE】 伝統的モータースポーツとは違った魅力のEVレース…第4戦レビュー
  • 開幕戦は今年の1月にサウジアラビアで行われた

電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」の第4戦が、イタリアの首都ローマで4月9日(土)に開催された。これまで紹介してきたように、FEではバッテリーの充電量を効率的に使うことが勝敗を左右する。今回も、「電費」を意識した戦略的なドライビングを見せたミッチ・エバンス(ニュージーランド)が、8台抜きでトップチェッカーを受けた。

◆次世代のモータースポーツ

FEは内燃機関(エンジン)ではなく、搭載したバッテリーから供給される電気で回るモーターで走る。世界中の自動車メーカーから続々と発売されているバッテリーEV(BEV)同様、二酸化炭素を排出しない。FEは、いわば次世代のモータースポーツと言える。

自動車メーカーも積極的に参戦しており、ポルシェ、ジャガー、マヒンドラ、DS(プジョー・シトロエングループ)と日産がエントリーしている。昨シーズンを最後にアウディとBMWが撤退し、メルセデスも今シーズンが最後となる一方、来シーズンからマセラティの参戦が決まっている。

ニッサンほか、自動車メーカーも積極的に参戦しているニッサンほか、自動車メーカーも積極的に参戦している

◆8シーズン目を迎える世界選手権

このシリーズは2014年に始まり、現在は「シーズン8」が行われている。1月にサウジアラビアの首都リヤドで開幕戦と第2戦の"ダブルヘッダー"が行われた後、2月にはメキシコで第3戦が開催された。それから約2ヶ月を経て、レースはイタリア、モナコ、ドイツと続くヨーロッパラウンドに入った。

6月からはインドネシア、カナダ、アメリカ、イギリスを転戦し、8月に韓国で最終戦を迎える。昨シーズン(2020年2月に開幕した「シーズン8」)からフォーミュラ1(F1)などと同様、世界自動車連盟(FIA)が認める「世界選手権」として開催されており、今季は世界10か国で合計16戦が行われる。

開幕戦は今年の1月にサウジアラビアで行われた開幕戦は今年の1月にサウジアラビアで行われた

◆FEの新しさ1:運営面

EVの特性と独特のレギュレーションを活用して行われるFEには、伝統的なモータースポーツとは違う面白さがある。このレポートでは、レースごとにそうした角度からFEを紹介している。

一部を除き、FEのレースは各開催国の首都など、アクセスの良い大都市の一般道を一時的に閉鎖した「ストリートコース」で開催される。FEのマシンが環境に優しい「ゼロ・エミッション」であることに加え、伝統的なレーシングカーよりも遥かに静かな点が、全レース市街地開催の背景にあるだろう。ファンが観戦しやすいこうした運営方法も、EVの特性を有効活用したモータースポーツの新しい取り組みと言える。

FEは開催国の首都など、大都市の「ストリートコース」で開催されるFEは開催国の首都など、大都市の「ストリートコース」で開催される

◆FEの新しさ2:EVならではの戦略

過去3レースのレビューでも紹介したように、FEのレースで勝敗を分けるカギの1つがエネルギー(充電)量の効率的な使い方だ。FEの場合、減速時の状況によっては市販のEVやハイブリッドなどと同じように回生が行われる。エンジンを搭載したレーシングカーの場合、燃料消費量節約の目的で「リフト・アンド・コースト(アクセルペダルから足を上げて惰性で走行)」を行うことがある。FEでは、惰性走行だけでなく減速時の回生も合わせた「電費」節約のテクニックが重要になり、レース展開に応じた頭を使った走りが結果を大きく左右する。

FEで勝つためには、減速時の回生も合わせた「電費」節約のテクニックが重要FEで勝つためには、減速時の回生も合わせた「電費」節約のテクニックが重要

◆電気を効率よく使ったエバンスが8台抜きで優勝

第4戦で優勝したジャガーレーシングのエバンスは、予選9番手と中団からのスタートとなった。「クルマが完璧だった」とレース後に語ったように、決勝レースではマシンの調子に手ごたえを感じたという。無理のないスムーズなドライビングで、レース中盤までに上位に浮上する。

一方で、ポールポジションからスタートしたストフェル・バンドーン(メルセデス- EQフォーミュラEチーム)と予選2番手のロビン・フラインス(エンビジョン・レーシング)は序盤から激しいバトルを展開。終盤にはエバンスも追いついて、3つ巴のトップ争いとなった。

エバンスは決勝レースの残り6分程度を残した時点で、フラインス(オランダ)とバンドーン(ベルギー)よりもエネルギーを1%~2%多く残していた。「電欠」を防ぐためにペースを上げられない2台を徐々に引き離したエバンスは、8台抜きでトップチェッカーを受けた。

後方から戦略的に追い上げたエバンスが優勝後方から戦略的に追い上げたエバンスが優勝


このように、FEは伝統的なモータースポーツの魅力に加えEVならではの要素も含む、まさに次世代のレースと言えるのではないだろうか。また、レースのための高効率なパワートレイン開発は、市販の電気自動車に採用される技術の発展にも貢献するだろう。今後も、「電気のF1」については独自の視点からレポートしていきたい。

《石川徹》

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