ホンダは11月24日、栃木県さくら市の同社施設で安全に関する取材会を開いた。このなかでホンダ車が関与する全世界の交通事故の死者を、2030年に20年のレベルから半減させる目標を示した。
ホンダは今年4月に就任した三部敏宏社長が、2050年に同社の二輪車と四輪車が関与する交通事故の死者をゼロにすることを目指すと公表している。その実現に向けたマイルストーンとして、新たに30年時点での半減を掲げた。
この目標は、すでに走っているホンダ車(保有車両)も全て対象にする。年々、保有車両は増えていくので、保有1万台当たりの死者数を指数として20年と30年で比較し、半減させるようにする。
本田技術研究所の先進技術研究所で安全安心・人研究ドメインを担当する高石秀明(高ははしご高)エグゼクティブチーフエンジニアは、半減へのアプローチとして先進国と新興国で、「各地域の実情にあった実効性の高い施策を展開する」方針を示した。先進国では四輪車、新興国では二輪車の保有が多いなどの地域特性があるためだ。
先進諸国では、これまでホンダの四輪車で起きた死亡事故の100%のシーンに対処する何らかの技術を、30年までに全機種に適用していく。具体的には安全運転支援技術である「ホンダセンシング」の技術進化と普及拡大により、全シーンの62%をカバー、残り38%を歩行者保護技術や衝突性能強化などでカバーする方針だ。ホンダセンシングにつては、車両周辺すべての死角がカバーできる全方位の「ホンダセンシング360(サンロクマル)」を22年から投入するが、30年までに先進国で販売する全モデルに展開する。
一方の新興諸国でのアプローチでは、先進ブレーキの普及拡大といった二輪車の安全技術、ホンダセンシングに二輪車を検知できる機能などを追加する。30年までの取り組みのうち4割をそうした技術面の対策とする。さらに、新興諸国では安全への意識を高めてもらうことが効果的なため、取り組みのうち6割を安全教育活動にさく計画としている。教育ではスマホや車載機器を活用したデジタル技術による講座やトレーニングのシステムも導入していく。
24日の取材会では、ホンダセンシング360などの実車による体験試乗を行うとともに、今後展開する新技術の柱として、AI(人工知能)を活用した「知能化運転支援技術」も公開した。AIによって一人ひとりのドライバーの特性に対応し、ヒューマンエラーを防ぐようにした世界初の技術としている。
本田技術研究所の大津啓司社長は取材会で、「2050年の死者ゼロを追求しながら、自由な移動の喜びを拡大したい。これはカーボンニュートラルとともに、企業としてやると決めた最重要課題だ。安全の技術開発は非常にすそ野が広く、やればやるほど良くなっていく世界でもある。われわれの安全に対する本気度をお伝えしていきたい」と語った。