【WRC 最終戦】セバスチャン・オジェ、2年連続8回目の頂点到達…トヨタは復帰後初の“全冠制覇”を達成

セバスチャン・オジェ(左)が8冠目のWRCタイトルを獲得。コ・ドライバーのジュリアン・イングラシア(右)も同じく8冠目。
  • セバスチャン・オジェ(左)が8冠目のWRCタイトルを獲得。コ・ドライバーのジュリアン・イングラシア(右)も同じく8冠目。
  • 最終戦モンツァで優勝、王座獲得も決めたオジェ組。
  • 勝利と戴冠を喜ぶセバスチャン・オジェ。
  • ジュリアン・イングラシア(オジェのコ・ドライバー)にとっては、最高の“勇退戦”になった。
  • 最終戦優勝の#1 オジェ(トヨタ・ヤリスWRC)。
  • 最終戦2位の#33 エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)。
  • 最終戦モンツァの表彰式。
  • 素晴らしいシーズンを戦ったトヨタ陣営は大きな歓喜に包まれた。

2021年世界ラリー選手権(WRC)の最終第12戦「ラリーモンツァ」が21日に終了し、セバスチャン・オジェが2年連続8回目のドライバーズチャンピオンに輝いた。オジェらを擁するトヨタのマニュファクチャラーズタイトル獲得も決まり、トヨタは“全冠制覇”を成し遂げている。

◆トヨタ勢によるドライバー王座争いの決着舞台

F1イタリアGPの開催地として知られるモンツァ・サーキットを中心に実施される「ラリーモンツァ」が、2年連続でWRCの最終戦となった。サーキット内の現・旧レーシングコースや施設道路(一部未舗装)を使ったスぺシャルステージ(競技区間=SS)と、外に出ての山岳ターマック(舗装路)SSによって構成される一戦だ。

「トヨタ・ヤリスWRC」を駆るドライバーのうちの2名に絞られているドライバーズチャンピオン争いは、#1 セバスチャン・オジェ(204点)が#33 エルフィン・エバンス(187点)を17点リードしての最終戦。個人フルマークが30点なので、今回#1 オジェが13点を獲れば、追う#33 エバンスがフルマークでも逆転初王座には手が届かない(同点の場合は優勝回数の比較でオジェ上位となることが確定しているため、#1 オジェは13点でOK。なお、ポイント面の話はすべて手元計算)。

#33 エバンスが今回、ラリーの優勝(25点)と最終SSであるパワーステージ(PS)の1位(ボーナス5点)を獲ってフルマークの30点と想定しても、#1 オジェはラリーの順位で3位(15点)に入りさえすれば自力王座だ。

同じく#33 エバンスが30点満点の想定で、#1 オジェはラリー4位(12点)+PS 2~5位(4~1点)、ラリー5位(10点)+PS 2~3位(4~3点)の場合でも、#33 エバンスに対し王座争いで勝利できる。また、#1 オジェはラリーで6位(8点)の場合、PSが1位(5点)なら王座ゲットである(このケースでは#33 エバンスはPS 2位以下の想定になるので、彼の想定得点も自動的に最大29点ということになる)。

PSの順位が絡むので想定や条件解釈が複雑かつ多様ではあるが、とにかく、逃げる前年王者#1 オジェが連覇に向け圧倒的に優位なことは間違いない。

一方、マニュファクチャラーズチャンピオン争いは、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT)が474点で、昨季まで2連覇のヒュンダイ(HYUNDAI SHELL MOBIS World Rally Team)が427点と、その差47点での最終戦入り。1戦あたりの最大獲得ポイントが52点なので、こちらはよほどのことが起きない限り、トヨタ3年ぶりの“奪冠”がほぼ確実な状況である(なお、ヒュンダイ陣営は今回、主軸のひとり #8 オット・タナク不在での臨戦)。

◆予想外!? 最終戦は熾烈な優勝争いに

ラリーモンツァは#1 オジェと#33 エバンスの激烈な一騎打ちという様相で進んでいった。金曜(19日)終了時、首位は#33 エバンスで、2番手の#1 オジェを1.4秒リード。しかし翌土曜終了時点では#1 オジェが首位、2番手の#33 エバンスとは0.5秒差である。

王座をつかむためには優勝がほぼ必須要件の#33 エバンスに対し、3位で充分な#1 オジェには少しペースをゆるめて付き合わない、という手もあったはずだ。でも、#1 オジェはそれをしなかった(ように思える)。

そうした計算は抜きにした、このラリーの優勝にかける想いの強さが伝わってくるようなタイムと順位の推移。#1 オジェのWRCフル参戦は今季が最後で、長年の相棒であるコ・ドライバー、ジュリアン・イングラシアはこれをもってコ・ドライバーとしてのキャリア自体を終える、という背景が、ラリーモンツァの優勝争いをヒートアップさせる要素になっていたのかもしれない。

#1 オジェは土曜の走行終了後、「明日(最終日の日曜)はまずタイトル獲得に集中して戦わなければならない。もし(このラリーにも)優勝することができたとしたら、それは嬉しいおまけのようなものだ」とコメントし、さすがに最終日はタイトル優先で#33 エバンスとはもう戦わないのかと思わせた。だが、3つのSSが残る日曜(21日)も最初のSS14ではゆるめた気配なく(シケイン状のバリアに前輪をこすり当てる場面が見られたくらい)、#1 オジェはラリーの首位をキープする。

続くラスト前のSS15では、ようやく少しゆるめたようなタイムに見えた#1 オジェ。一方ここで、追う#33 エバンスにはコーナーでリヤが流れてオフするシーンが。エンジンストールもあったようで、首位#1 オジェとの差が7.6秒へと広がり、ほぼ大勢が決したようであった。

2021年WRC最終戦ラリーモンツァは#1 オジェが優勝、2年連続8回目のチャンピオン獲得を最高の結果で決めることとなった。今季5勝目は通算54勝目だ。最終戦の2位は#33 エバンス、3位は#6 ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)。トヨタは3年ぶりのマニュファクチャラーズタイトル獲得決定に1-2フィニッシュで花を添えた(シーズン9勝目)。

イングラシアも2年連続8回目となるコ・ドライバー部門の世界タイトル獲得を達成。トヨタはマニュファクチャラー、ドライバー、コ・ドライバーの3冠(全冠)を制覇した。これは2017年のワークス参戦再開以降では初となる。

◆王者オジェ「パーフェクトな結末といえる」

2021年WRCドライバーズチャンピオン セバスチャン・オジェのコメント

「今の気持ちを表現するのはとても難しい。いつもそうだが、チャンピオンシップを勝ち獲るためには多くのことを捧げてハードにシーズンを戦う必要があり、ヘトヘトになってしまう。しかし、私たちは今日のような瞬間のために戦っているんだ。チームのメンバー全員に感謝する。彼らの存在なしに我々は何も成し得ないし、今日はチームの全員がワールドチャンピオンになったのだから、みんなで祝いたい」

「トヨタが成し遂げたことは非常に素晴らしいことで、チームはタイトルを獲得するに相応しい、多大な努力を重ねてきた。また、これでジュリアン(イングラシア)との旅が終わりになるのかと思うと、感慨もひとしおだ。これ以上の良い終わり方はなかったと思う」

「この週末を迎えるにあたってはやるべきことがたくさんあり、(タイトルを巡る)戦いがまだ終わっていないことを理解していた。このラリーでエルフィン(エバンス)に勝つ必要こそなかったけれど、リラックスすることはできず、順位を落とすわけにもいかなかった。そうしたなかで最終的に(ラリーでも)優勝できたのはパーフェクトな結末といえるよ」

セバスチャン・オジェはフランス籍の37歳(12月で38歳)。2013年に初めてWRC王者となり、2018年まで6連覇を成した(13~16年はフォルクスワーゲンで、17~18年はMスポーツ・フォードで戴冠)。19年を古巣シトロエンで戦ったのち、20年からトヨタ(TGR-WRT)で走っている。昨季(20年)、自身2年ぶりの王座に就き、今季も連覇。6連覇+2連覇で通算のWRCドライバーズチャンピオン獲得は8回、これはセバスチャン・ローブの最多9回(2004~12年に9連覇)に続く数字である。

オジェは来季もトヨタでWRCを戦うが、前述のようにフル参戦は今季が最後としている(最近、トヨタのWECハイパーカーをテストしており、将来的にはこちらの方向に本格的に挑戦する可能性も?)。つまりオジェの王座獲得も今季が最後になると考えられ、WRCは来季から新たな時代に入ることとなる。

◆勝田貴元は最終戦7位、年間ランキングでも7位に

日本の#18 勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)は最終戦を7位で終えた。最終的なドライバーズランキングも7位となっている。

勝田は来季もWRCのトップカテゴリーにトヨタのマシンでフル参戦することが決まっている(今季もフル参戦の計画だったが、やむを得ない事情による欠場が1戦あった)。勝田のWRC最高位は今季第6戦サファリでの2位。来季は“その上”を狙える機会を何度かつくり、そしてそれを成就させてくれることを期待したい。

来季2022年のWRCは1月にモンテカルロにて開幕予定(全13戦の予定)。トップカテゴリーのマシン規定がこれまで「WRカー」と呼ばれていたそれから、新たな「Rally 1」へと移行し、WRCにおける“ハイブリッド元年”になるといわれているシーズンだ。その意味でも新時代突入となる。そして最終戦の舞台は“今度こそ”のラリージャパンである(愛知・岐阜にて11月10~13日開催予定)。

*上記の順位や日程等は、日本時間22日16時の段階の掲示や情報等に基づく。

《遠藤俊幸》

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