[カーオーディオ用語解説2021]システム…マルチアンプシステム

カーオーディオに興味を持ちつつも、専門用語の難解さに壁を感じて結局これを遠ざけてしまった…、そのような経験を持つドライバーに向けて当特集を展開している。今回は「システム編」の第2回目として「マルチアンプシステム」について説明していく。

「マルチアンプシステム」とは、より高度なシステム様式!?

「マルチアンプシステム」という語句は、現代カーオーディオにおいてもっとも重要度の高いワードの1つだ。なのでこれについては特別に、今回と次回の2回にわたり多角的に解説していこうと思う。

さて、これが何なのかをひと言でいうなら以下のとおりだ。「マルチアンプシステム」とは、「パワーアンプの1chずつをスピーカーユニットの1つずつに割り当てるシステムレイアウト」のことを指す。

なお、これの対義語は「パッシブシステム」だ。とはいえ「パッシブシステム」という語句は、使われる頻度は高くない。つまり実際は、「マルチアンプシステム」か、それ以外の通常のシステムか、このどちらかということになる。

ところで「パッシブ」については当特集の第5回目の記事の中で詳しく説明したのだが、ここでも簡単におさらいしておきたい。これは基本的に「セパレートスピーカー」に付属しているもので、音楽信号の帯域分割を行うための装置だ。例えば「セパレート2ウェイスピーカー」では、高音再生を「ツイーター」が行い中低音の再生をミッドウーファーが担当する。そしてそのような役割分担をさせるためには、音楽信号を高音と中低音とに2分割する必要がある。その作業を実行するのが「パッシブ」だ。

で、「パッシブ」を用いて「セパレート2ウェイスピーカー」を鳴らす場合には、以下のようにシステムが組まれる。「メインユニット」の「内蔵パワーアンプ」を使う「内蔵アンプシステム」を例に説明していこう。この場合には、「内蔵パワーアンプ」のフロント右chの出力を右スピーカーの「パッシブ」に接続し、フロント左chの出力を左スピーカーの「パッシブ」に接続する。

このように「パッシブ」には、左右のchのフルレンジの信号がそのまま入力され、そして「パッシブ」内で高音信号と中低音信号とに分割され、パッシブのツイーター用の出力端子とツイーターとが、そしてミッドウーファー用の出力端子とミッドウーファーとがそれぞれケーブルで接続されることとなる。

『ダイヤトーンサウンドナビ』によって「パッシブシステム」を構築したときのシステム図。

「マルチアンプシステム」では、「パワーアンプ」の前段で信号の帯域分割を実行!

対して「マルチアンプシステム」では、以下のようにシステムが構築される。これもまた、「フロント2ウェイスピーカー」を「メインユニット」の「内蔵パワーアンプ」にて鳴らす場合で考えてみる。

なお「マルチアンプシステム」を構築する場合には前提として、音楽信号の帯域分割は「パワーアンプ」の前段で行われる。なので「内蔵アンプシステム」では、「メインユニット」に内蔵されている「プロセッサー」を使って音楽信号を高音と中低音とに分割し、その上でさまざまな信号制御も併せて実行された後、分割された各信号が「内蔵パワーアンプ」の1chずつへと送られる。

そして「内蔵パワーアンプ」のそれぞれの出力端子と各スピーカーとが、スピーカーケーブルにてダイレクトに接続される。これにて、「内蔵アンプシステム」で実行される「マルチアンプシステム」が完成されることとなる。

ところで「メインユニット」の「内蔵パワーアンプ」は普通、4chタイプだ。なので「内蔵アンプシステム」にて「マルチアンプシステム」を組む場合に鳴らせるスピーカーは「2ウェイスピーカー」までだ。つまり「3ウェイスピーカー」は鳴らせない。スピーカーの1つ1つに「内蔵パワーアンプ」の1chずつをあてがうわけなので、「3ウェイスピーカー」の場合は「パワーアンプ」のch数が計6つ必要となるからだ。

で、「2ウェイスピーカー」を鳴らす場合には、「内蔵パワーアンプ」の4chすべてをフロントスピーカーで使い切ることとなる。よってリアスピーカーは鳴らせなくなる。このことはデメリットと言えるのだが、「マルチアンプシステム」を実践すると、それを補って余り有る利点が得られる。

『ダイヤトーンサウンドナビ』によって「マルチアンプシステム」を構築したときのシステム図。

「マルチアンプシステム」では、「内蔵パワーアンプ」を贅沢に使える!?

得られるメリットは主には2つある。1つが「スピーカーをトルクフルに鳴らせること」で、もう1つが「より緻密にサウンドチューニングを行えること」、この2つだ。

2つのメリットについて、それぞれがどういうことなのかを説明していこう。まずは「スピーカーをトルクフルに鳴らせること」について解説していく。

この利点が得られ理由はひとえに、「パワーアンプ」を贅沢に使えるからだ。「パッシブシステム」では「内蔵パワーアンプ」の1chで片側のツイーターとミッドウーファーの両方を鳴らすわけだが、「マルチアンプシステム」では1chあたりが担当するスピーカーは1つだけだ。ゆえに負担が減り、スピーカーを動かすことと止めることをそれぞれ、より確実に、より力強く、より素速く行える。

また、「内蔵パワーアンプ」から各スピーカーまでの配線を別系統にできるので、信号の干渉も減る。このことも、スピーカーをしっかり動かすことに好影響をもたらす。

続いて「より緻密にサウンドチューニングを行えること」というメリットについて説明していこう。この利点が得られる理由は、チューニング機能を1つ1つのスピーカーユニットに個別に運用できるからだ。「パッシブシステム」では「ツイーター」と「ミッドウーファー」とが別々の場所に取り付けられていても、それらを1つのスピーカーとして扱うこととなる。しかし「マルチアンプシステム」では、各スピーカーそれぞれを単独でコントロールできるので、“痒いところに手が届く”。つまり、よりきめ細やかなサウンド制御を実行できるのだ。

今回はここまでとさせていただく。次回は「マルチアンプシステム」のいろいろについて解説していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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