不動産×MaaS「Whim」の実証実験の振り返り…三井不動産 ビジネスイノベーション推進部 塚田竜也氏[インタビュー]

Beyond MaaSの領域で不動産×MaaSとして、MaaSアプリの代表格として有名なMaaSグローバル社の「Whim」を用いた実証実験を2020年度後半に実施するとのニュースは、多くの注目を集めた。その実証実験はどうだったのか、三井不動産ビジネスイノベーション推進部の塚田竜也氏に聞いた。

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アセットのみならず街の価値向上を目指す

---:御社は柏の葉を中心に、以前からスマートシティや多様な移動手段の活用を通した街づくりに取組まれていますね。不動産会社がMaaS事業に取組むのはなぜですか。

塚田氏:三井不動産グループには、オフィスビル事業、ららぽーとなどの商業施設事業、ガーデンホテルなどのホテル・リゾート事業、三井不動産レジデンシャルなどの住宅分譲・賃貸事業などがあります。今回実証実験を実施した柏の葉エリア、日本橋エリア、豊洲エリアは、弊社グループのアセットが集まっているエリアです。

三井不動産はMaaSを通して、街の関係者に”移動の自由“を提供し、街全体の魅力を底上げしたいと考えています。
その上で単なる移動サービスを提供するだけではなく、ユーザー起点で移動の先に何が求められているかを捉えてサービス設計したいと思っています。具体的には各地域や個々人のニーズにあったサービスを目指し、また商業施設やイベント等ユーザーが関心を持って頂けるような提案を行いライフスタイル創出に関わっていくというものです。

---:これまでのスマートシティなどの取組みの延長でMaaSに取組まれているのでしょうか?

塚田氏:当社には柏の葉エリア、日本橋エリアなど、エリアごとに担当部署があります。各部署と連携しながら街づくりの一環として進めていますが、今回MaaSを担当しているのは、2020年4月に部として発足したビジネスイノベーション推進部です。MaaS事業はこれらエリアのみならず、他エリアでも展開していきたいと考えています。

---:Whimを用いた不動産×MaaSの実証実験を2020年度に実施されていますね。どのような実証実験を実施されたのでしょうか。

塚田氏:実証実験はマンション専用MaaSという形で都市近郊型と位置付けた柏の葉エリア、準都心型として豊洲エリア、都心型として日本橋エリア合計6棟のマンションで実施しました。

MaaSアプリWhimを用いて、タクシー、バス、カーシェア、自転車シェアを月額料金にしたサブスクリプションプランを用意して、一部のマンションにはユーザー専用のカーシェアや自転車シェアが貸し出せるようにしました。

---:実証実験はいかがでしたか?

塚田氏:これまでにないサービスの実施だった為様々な課題がありました。一例を申し上げると現在の料金プランに行きつくまでにいろいろな試行錯誤がありました。

始めは2020年9月から12月にパークシティ柏の葉キャンパス、ザ・ゲートタワー・ウエストで無償から始め有償の実証実験を実施しました。用意したプランは定額でそれぞれのモビリティを一定回数・価格分乗車できるというプランを提供しました。自転車シェアを無制限、バス乗車券300円分を8回、カーシェア12時間分、タクシー2000円分を月額8000円で提供するといった形でした。

料金の価格に対して、様々な意見が寄せられました。「自転車シェアの無制限は要らないから自分が普段使う移動手段だけにして欲しい」「カーシェアを利用しないので寧ろ損した気分になる」等、様々な意見を頂き、それらにできる限り応じる形でサービス内容の改善を図りました。

このような試行錯誤の中、最新のプランは、ユーザー自身が自由に使うモビリティを選択できるWhim10プラン、Whim5プラン、Whim2プランの3つとなっています。

最新の料金プラン

ユーザーに寄り添ったMaaSづくり

---:実証実験で大切にされた点は何でしょうか。

塚田氏:個人的に現場を大事にし、実際サービスを利用頂くユーザーの声に耳を傾けることは意識しました。実証実験にご参加いただいた住民の方々にヒアリングをさせて頂き、できる限り実際の提供サービスにフィードバックしました。

形式的なアンケートはユーザーの方のほんの一部の声でしかないでしょう。例えば「カーシェアを使わない」と答えた方でも、直接詳しくお話を聞くと、根本的にプラン・サービスが悪いから使わないのではなく、利用してみたいがペーパードライバーでクルマに乗るのが怖くて使えなかったりしたので、使わないとご回答される場合があります。そのようなユーザー向けに自動車教習所さんにご協力頂きペーパードライバー講習をキャンペーンとしてセットで提供する等様々な試みを合わせて実施しました。

私たちの目的は、MaaSを提供することではなく、街及びそこに関わる人々の暮らしをもっとより良いものにすることです。そのため、そこに住む居住者の声に耳を傾け、寄り添う姿勢を大切にしています。

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《楠田悦子》

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