ベントレーの名車『ブロワー』、90年ぶりに完成…12台の復刻生産に向けて走行テストへ

オリジナルモデルはバーキン卿のレースチームのために4台生産

ビンテージ部品の製作や仕上げはスペシャリストが担当

エンジンには数多くの最新技術を採用

ベントレー・ブロワー のプロトタイプ
  • ベントレー・ブロワー のプロトタイプ
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ベントレー(Bentley)は12月9日、『ブロワー・コンティニュエーション・シリーズ』の復刻生産に先駆けて、製作を進めてきた『ブロワー』のプロトタイプが完成した、と発表した。ブロワーの新たな製作は、90年ぶりという。

ブロワーのプロトタイプは、販売されない車両であることから、「カーゼロ」と名付けられた。カーゼロに続いて製作される12台の復刻モデルは、すでに完売。その製作には、1920年代後半にオリジナルのブロワーが製造されたときの図面と治工具が使用される。

オリジナルモデルはバーキン卿のレースチームのために4台生産

オリジナルのブロワーはヘンリー・ティム・バーキン卿のレースチームのために、4台が製造された。4台のチームカーの中で、ベントレーが所有する2号車(シャシー番号「HB3403」、エンジン番号「SM3902」、ナンバー「UU5872」)を、コンティニュエーション・シリーズのために分解。一つ一つの部品を残らずレーザースキャンするところから、プロトタイプの製作は始まった。

収集したデータをもとに、新たなブロワー用のパーツ1846個が設計され、手作業で製作された。ただし、そのうち230個はアッセンブリーであり、その中にはエンジンも含まれるため、ねじやインテリアトリムなどの個々のパーツを含めると、実際には数千のパーツが製作された。

こうしたパーツやアッセンブリーは、ベントレーマリナープロジェクトチームのエンジニア、職人、テクニシャンが、英国内のスペシャリストやサプライヤーらと協力して作り上げた。カーゼロは、12台の復刻モデルに先駆けて、開発・試験用に製作されたプロトタイプで、今後数か月かけて耐久試験と性能試験が実施される。

カーゼロのエクステリアはグロスブラック、インテリアはブリッジ・オブ・ウィアー社製のオックスブラッドと呼ばれる赤いレザー仕様だ。ブロワー・コンティニュエーション・シリーズは、ベントレーマリナーの「クラシック」部門が顧客のために手がけた初めてのプロジェクトになる。

ビンテージ部品の製作や仕上げはスペシャリストが担当

カーゼロの製作は、オリジナルブロワー4台の製造時に使用された設計図や下書き、当時撮影された写真を徹底的に分析することから始まった。次に取り掛かったのは、ベントレーが所有するブロワーの2号車の分解。フレームとパーツをレーザースキャンし、その精密なデータを基に、CADによるデジタルモデルが完成した。

続いて、各パーツを製作する職人たちが集められた。そうして製作されたパーツを使い、ベントレーマリナーが形にしたのがカーゼロになる。

ベントレーマリナーはブロワー・コンティニュエーション・シリーズの製作当初から、パーツを外部に依頼することを計画していた。今回のプロジェクトでは、何世代にもわたって伝統的技術を継承している英国きってのスペシャリストらに協力を仰いだ。

シャシーは、イスラエルのニュートン&サンズ社が極厚鋼板を手作業で成形し、熱間によるリベット留めによって完成させた。同社は、蒸気機関車のボイラーやトラクションエンジンの製作を手掛けてきた創業200年の歴史ある会社で、伝統的工法による金属の鍛造・成形加工を得意としている。

ブロワーの主要パーツのいくつかを忠実に再現したのはビスターヘリテージに拠点を置くビンテージ・カー・ラジエター・カンパニーだ。鏡面仕上げが施されたニッケルシルバー地金製ラジエターシェルや、スチールと銅板を打ち出し成形したフューエルタンクなどを手がけた。この会社はビンテージカーのラジエターやコンポーネントの製作・復元におけるトップメーカーであり、今回のような複雑かつ重要なパーツの製作に欠かせない存在という。

リーフスプリングとシャックルは、ウェストミッドランズにあるジョーンズ・スプリング社のオリジナル仕様。鍛冶屋をルーツとし、75年近い歴史を持つ会社だ。

ブロワーのシンボルであるヘッドライトは、シェフィールドにあるビンテージ・ヘッドランプ・レストレーション・インターナショナル社によって再現された。親子経営のこの会社は銀細工で知られ、オリジナルの仕様に従って、ビンテージデザインのヘッドランプを製作する技術は、世界的に高い評価を得ているという。

アッシュフレームは、ラドローにあるロマックス・コーチビルダーズ社が製作し、クルーのマリナートリムショップにて、職人らが最終仕上げを施した。ブロワーのボディは、25mに及ぶ人工皮革の「レキシン(Rexine)」で覆われている。ボディの内装はマリナーの職人の手によって仕上げられた。オリジナルのブロワーと同じく、シートの中身には計10kgの天然馬毛が使用されている。

エンジンには数多くの最新技術を採用

カーゼロのエンジンは、W.O.ベントレーが設計した4「2分の1」リッター。ワトフォードにあるNDR社などの協力を得て、新たに製作された。このエンジンにはアルミ製ピストン、オーバーヘッドカムシャフト、4バルブ、ツインスパークイグニッションなど、最新技術が数多く採用されている。ルーツ式スーパーチャージャーも新たに機械加工され、このエンジンに搭載された。今回製作されたエンジンは、1920年代後半にバーキン卿のレースチームのために製作された4台のブロワーのエンジンを忠実に再現しており、クランクケースにマグネシウムが使用されている。

まずは、ブロワーのフロントシャシーのレプリカが作成された。そのレプリカにエンジンを格納することによって、コンピューター制御のエンジンダイナモメーターに取り付けできるようにした。さらに、ベントレーのエンジニアがエンジンをモニターし、正確なパラメーターでエンジンを作動できるようにするため、エンジンの測定と制御に使う新しいソフトウェアの作成とその動作確認も行われた。

ブロワーのパワートレインは、現在のベントレーに搭載されているエンジンとは、サイズも形状も全く異なる。そのため、再現されたエンジンをテストベットに取り付ける際には、船舶用エンジンのテスト用としてベントレーに保管されていた当時の取付具も、多数活用されている。完成したエンジンは車両に搭載される前に、テストスケジュールにしたがって試運転が行われた。

カーゼロは今後、リアルワールドでの耐久試験に入る。走行時間と走行速度を徐々に増加させながら、より厳しい条件下で機能性と耐久性を確認していく。この試験プログラムは8000kmのテストコース走行を含め、3万5000kmを達成するように計画されている。北京・パリモーターチャレンジや、ミッレミリアなどのクラシックカーラリーでの走行を想定して行われる、としている。

《森脇稔》

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